遺伝性不整脈疾患「カルモジュリノパチー」、発症メカニズムを明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 「カルモジュリン」の遺伝子変異が、重症遺伝性不整脈を引き起こすメカニズムは不明だった
  2. 患者さん2人からiPS細胞を作製し、分化させた心筋細胞を解析
  3. その結果、変異型カルモジュリンが重症不整脈を引き起こす仕組みを明らかにした

カルモジュリンの遺伝子変異、心筋細胞でどのように不整脈を引き起こすのか

京都大学を中心とした研究グループは、カルシウムイオンのセンサーとして機能するカルモジュリンの遺伝子変異が、重症の遺伝性不整脈疾患「カルモジュリノパチー」を引き起こすメカニズムを、iPS細胞から作成した心筋細胞モデルを用いて明らかにしたと発表しました。

カルモジュリンは、体中のあらゆる細胞に存在しているタンパク質で、カルシウムイオンのセンサーとして他のさまざまなタンパク質の機能を調節する役割を持ちます。カルモジュリンの設計図となる遺伝子はCALM1からCALM3までの3種類あり、どれも同じアミノ酸配列からなるタンパク質を作り出します。

近年、このCALM遺伝子の変異が「先天性QT延長症候群」や「カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)」などの、重症な遺伝性不整脈疾患の原因となることが報告され、カルモジュリン関連不整脈疾患「カルモジュリノパチー」として研究が行われています。

しかし、CALM遺伝子変異がヒトの心筋細胞においてどのように命に関わる不整脈を引き起こすのか、そのメカニズムに関しては十分に解明されていません。研究グループは、運動時に失神の症状を認めた血縁関係ではない2人のCPVT患者さんについて、遺伝子解析を行うと同時に血液細胞からiPS細胞を作製し、分化させた心筋細胞の解析を行いました。

変異したカルモジュリン、カルシウムイオン放出を調節するタンパク質と異常な結合

遺伝子解析の結果、CALM2遺伝子において「E46K」と呼ばれる変異を同定しました。次に、患者さん由来のiPS細胞から作製した心筋細胞と健康な人由来の心筋細胞を比べて解析を行ったところ、患者さん由来の細胞で異常な電気的興奮とカルシウムの動態異常が確認され、CPVTの特徴を再現していることが示されました。

さらに解析を行ったところ、変異したCALM2遺伝子から作られる変異型カルモジュリンは、リアノジン受容体と呼ばれる、細胞質へのカルシウムイオン放出を調節するタンパク質と異常に優先的に結合をすることで、筋肉でカルシウムイオンを貯めている組織の中から、カルシウムが漏れ出すのを促進し、それが重症不整脈の原因となっていることがわかりました。

加えて、患者さんのiPS細胞由来心筋細胞に抗不整脈薬(ナドロール、フレカイニド)を作用させると、抗不整脈効果が示されました。

研究グループは、今回の研究成果は、実際の患者さんの診療や原因遺伝子に応じた精密医療にも貢献できるものであるとし、今後も研究を進めて行きたいと述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク