世界中のバリアフリーマップがここに!?アプリ「WheeLog!」とは

遺伝性疾患プラス編集部

車いすをお使いの方で、「お出かけに必要なバリアフリー情報、なかなか見つからないな…」と感じた経験のある方はいらっしゃいませんか?今回ご紹介する『WheeLog!(ウィーログ)』は、ユーザー同士でバリアフリー情報を共有することで、日本を中心に世界各地のバリアフリー情報がわかるアプリ。「車いすでもあきらめない世界」をミッションに掲げて活動する、一般社団法人WheeLogが手掛けています。

『WheeLog!』では、親しみを込めて、アプリ内のユーザーを「WheeLoggers(ウィーロガーズ)」と呼んでいます。2021年2月現在、2万8,072人のWheeLoggersがアプリを利用されています。

『WheeLog!』の取り組みは、社会的に評価されつつあり、2020年には科学技術振興機構(JST)によるアワード「STI for SDGs」で、最優秀賞「文部科学大臣賞」を受賞しました。STI for SDGsは、科学技術イノベーション(STI)を用いて社会課題を解決する、地域における優れた取り組みを表彰するアワードです。

今回は、そんな『WheeLog!』について、「どんな機能が使えるの?」「実際に使っているユーザーの声は?」といった基本的な情報はもちろん、WheeLog代表・織田友理子さんのアプリにかける想いなどをご紹介していきます。

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アプリ『WheeLog!』でのマップイメージ(画像はWheeLogウェブサイトより)

「タイムライン」「マップ」「投稿」機能で、知る・つながる

『WheeLog!』の主な機能は、大きく3つです。

(1)「タイムライン」機能

ユーザーが投稿した、各地の最新のバリアフリー情報を閲覧可能。投稿に対する、他のユーザーのコメントも一緒に見ることができます。

(2)「マップ」機能

車いすで通る道や、バリアフリーのスポットを地図上で確認できます。GPS機能を使って、いま自分がいる場所の周辺のバリアフリー情報をすぐに検索できるので、初めて訪れる場所へも安心してお出かけできます。

(3)「投稿」機能

アプリでは、以下の4つの情報を発信できます。

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『WheeLog!』では、4つの情報を発信できる(画像はWheeLogウェブサイトより)

  • 走行ログ

ユーザーが車いすで通った道を、マップ上に記録できます。

  • スポット

多目的トイレや駐車場、レストランなど、車いすユーザーが利用できる施設や設備のバリアフリー情報を共有できます。

  • つぶやき

タイムラインで、ユーザーの今の気持ちを共有できます。

  • リクエスト

ユーザーが知りたいスポットのバリアフリー状況を、リクエストできます。

また、実際にアプリを利用しているWheeLoggersからは、以下のようなコメントが寄せられているそうです。

「車椅子になったらなかなか出れなくなるものと思っていましたが、日本どころか世界でも行くことが出来ると思うと、将来の不安もかなり軽減されました」

「当事者だからこそ分かる必要な情報、それを私も投稿して、他のユーザーさんからコメントをいただいたり、反応があるのは、やっぱり嬉しいです」

機能面はもちろん、アプリ内での人と人のつながりも、WheeLoggersから好評いただいているポイントの1つと言えそうですね。

オンラインでの街歩き、商業施設のバリアフリー調査も

続いて、WheeLogが行っている、さまざまな取り組みをご紹介します。

まず、「街歩き」は、車いすに乗って街のバリアやバリアフリーを学ぶことができる体験型ワークショップ。学校や企業向けにさまざまなプログラムを提供しています。2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、オンラインで開催しました。その名も、「WheeLog!オンライン街歩きイベント in 超福祉展2020」。開催会場は全国12か所で、スタッフを含め96人が参加されたそうですよ。

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オンライン街歩きイベントの様子(一般社団法人WheeLog提供)

続いて、池袋サンシャインシティでは、バリアフリー調査を2020年2月18・19日に実施。『WheeLog!』では、池袋駅・東池袋駅からサンシャインシティまでのアクセスやレストランの使いやすさの確認などを行いました。調査結果をまとめた「サンシャインシティバリアフリー情報サイト」が、公開されています。施設を利用される予定のある方は、ぜひご覧になってみてくださいね。

代表・織田友理子さん「みんなで、世の中を良くしていこう」

最後に、アプリ発案者であり、WheeLog代表の織田友理子さんに、活動への想いを伺いました。

織田さんが「遠位型ミオパチー」と診断を受けたのは、2002年のこと。遠位型ミオパチーは、足首を動かす筋肉や指先を動かす筋肉など、体幹から遠い筋肉から障害されることが特徴的な遺伝性疾患です。

お子さんを出産されてから車いす生活となった織田さんは、子育てをする中で、毎年夏になると「息子を海に連れて行ってあげたい」と思うようになりました。一方で、「私は車いすだから、海へ行けない」と、あきらめていたのだそうです。

しかし、車いすでも利用可能なビーチの情報をネットで見つけたことで、実際にお子さんと海に出かけることができたのだとか。織田さんは、「車いすでも、あきらめなくていい」と感じ、同時に、バリアフリーの情報を得ることでさまざまな場所へ出かけられることを知りました。これが、『WheeLog!』開発のきっかけとなったのだそうです。今回は、織田さんに、お話を伺いました。

『WheeLog!』を通じて、車いす利用者の方々にどのような体験をしてもらいたいですか?

『WheeLog!』には、ユーザーの方から寄せられた情報が蓄積されています。その情報を使って、車いす利用者の方々に、ぜひ外に出てほしいと思います。

車いすで外へ出ることは、勇気のいることかもしれません。でも、日本のバリアフリー環境は、実は、世界と比べると進んでいるんですよ。そういったことも、『WheeLog!』を通じて知ってもらえたらと思います。

今後の目標について、教えてください。

私たちは、社会全体のバリアフリーを推進していけるような団体を目指しています。

例えば、車いすで一歩外へ出ると、道がガタガタしていたり、傾斜があったり、また、お店に入れなかったりといったことに遭遇します。そういったことを、健常者の皆様にも車いすに実際に乗ってもらうことで知っていただきたいですね。そして、車いすに乗って大変だったこと、逆にうれしかったことを、みんなで共有していきたいです。

このように、ただ情報を集めるだけではなく、社会全体のバリアフリーを推進していきたいと考えています。

最後に、車いす利用者の方々へメッセージをお願い致します。

まだ、街中で車いす利用者を見かけることは少ないと感じています。

当事者が社会に参画していくことで問題点が可視化され、対応策が講じられます。ですので、あなたの体験は社会を良くしていくために重要なんです。みんなで、世の中を良くしていきましょう。


「外へお出かけしてみよう!」と思われた車いす利用者の方は、『WheeLog!』を使ってお出かけ先のバリアフリー情報を探してみてはいかがでしょうか?

アプリのダウンロード先のページは、関連リンクからご覧ください。(遺伝性疾患プラス編集部)

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