バリアフリーeスポーツ「ePARA」、誰もが自分らしく生きる世界を目指す取り組みとは?

遺伝性疾患プラス編集部

オンラインの対戦型ゲームを用いて勝敗を競う「eスポーツ」。Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として行います。

このeスポーツを通じて、障害がある方が自分らしく、やりがいをもって社会参加する支援を行っている株式会社ePARA(イーパラ)は、『バリアフリーeスポーツ』の大会企画・運営をはじめ、eスポーツを通じて当事者と企業をつなげる活動や当事者の就労支援など、幅広く活動しています。その活動の背景には、「誰もが自分らしく生きる世界をつくる」というePARA代表・加藤大貴さんの強い想いがありました。

今回は加藤さんに、ePARAの取り組みや、実際に企画に参加された方々の声などについてお話を伺いました。

※ePARAでは、メンバーを「患者」ではなく「部員」と呼んでいます。そのため、記事内で一部「部員」と表現している箇所があります。

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ePARA代表 加藤大貴さん

年齢・性別・時間・場所・障害の有無を問わず参加できる『バリアフリーeスポーツ』

バリアフリーeスポーツについて、教えてください。

バリアフリーeスポーツは、株式会社ePARAで提唱している造語で、「年齢・性別・時間・場所・障害の有無を問わず参加できる環境の下行われるeスポーツ」と定義しています。

バリアフリーeスポーツは、一般的なeスポーツとどのように違いますか?

前提として年齢・性別・時間・場所・障害の有無といったバリアを取り除いていくことに、価値を置いています。

そのため、一般的なeスポーツと比べると、勝敗への固執が少ないことが特徴です。また、eスポーツを通じたプレイヤー同士のコミュニケーションが活発なことや、プレイヤーとサポーター、運営スタッフとの関係性が深いといったこともバリアフリーeスポーツの特徴だと思います。

ePARAの活動に参加されている方は、どのような障害をお持ちですか?

ePARAの会員さんがお持ちの障害は、さまざまです。病気によって思うように体を動かしづらい状態の方もおられれば、視覚障害、聴覚障害などをお持ちの方もおられます。そのため、活動を進める中で、「〇〇さんには、どういう配慮が必要か?」など、互いへの思いやりが自然とできている印象があります。

これまであまりゲームをやったことがない初心者の方でも、バリアフリーeスポーツに参加できますか?

はい、参加できますよ。多様性への理解や、他のプレイヤーへの配慮を欠かさない方であれば、どなたでもご参加頂けると思います。実際に、もともと「ゲームは苦手…」とおっしゃっていた会員さんの場合でも、「コミュニケーションが好き」「誰かを応援するのが好き」と言って、楽しんで参加してくださっています。

その他にも、eスポーツに参加できる環境をみんなで作るために「サポーター」がいるので、安心してご参加頂ければと思います。

サポーターとは、どのようなことをする方ですか?

eスポーツをプレイする環境を、一緒につくるサポートをしてくれる方です。

例えば、視覚障害がある方向けに、eスポーツの試合ができるような状況を整えるというサポートを行います。PCを立ちあげる、試合を行うルームに入るためのサポートを行うなど、サポーターは細やかな支援を行います。

このように、1人だと難しいことも、サポーターがいることで楽しめる状況をつくることが可能です。

誰もが輝ける就労環境、自分らしく生きる社会の実現に向けて

加藤さんが、今のお仕事を始めることになった経緯について教えてください。

裁判所書記官という国家公務員の仕事から、福祉業界で働くことを選択しました(※詳しくは、コチラの記事をチェック!)。そこから、障害がある方との関わりが多くなりました。この関りを通じて、健常者と呼ばれる私たちと障害がある方は、「遠くない存在だ」と気付いたのです。それは、実際に障害がある方とお会いして話したからこそ、気付けたことでした。

また、社会福祉協議会に勤務していた時に、障害者雇用で働く方々とお話しする機会がありました。そこで、全員が必ずしもやりがいのある仕事ができているわけではないという状況を知ったんです。こういった経験から、「誰もがやりがいを持って働き、輝ける就労環境をつくりたい」と考えるようになりました。

そこから、どのようにしてePARAを始められたんですか?

2019年の夏、群馬県高崎市で開催された障害者eスポーツ大会を視察したことがきっかけでした。障害がある方の皆さんが、eスポーツを通じて、生き生きと活躍している姿に感銘を受け、「eスポーツの魅力や強みを活かすことで、障害がある方がもっと生き生きと活躍できる舞台を創り出せる」と考えたんです。そして、「東京でもイベントを開催したい」と考え、障害者eスポーツ大会「ePARA2019」の開催に向けて動き始めました。

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「eスポーツの魅力や強みを活かすことで、障害がある方がもっと生き生きと活躍できる舞台を創り出せる」、と加藤さん

「自分らしく生きていける社会」の実現に向けて、ここからePARAの活動が始まりました。

ePARAが始まってすぐ、2020年から新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。その影響はいかがでしたか?

さまざまなイベントが、中止となりました。2020年は、東京パラリンピック開催が予定されていた年だったので、行政と関連イベントを企画していたのですが、コロナ禍で中止せざるを得ない状況でした。

ただ、悪いことだけでなく、良いこともありました。その一つが、完全オンラインイベントとして開催した「バリアフリーeスポーツ ePARA2020」です。これは、障害者雇用の「課題と希望」をeスポーツで解決・実現するオンラインイベントとして開催しました。参加者だけでなく、運営側も完全にオンラインで開催したことは、大きな挑戦でしたね。正直、運営側で大変なことが多くありましたが、無事に成功したことで、「コロナ禍だからこそ、自分たちにできることをやっていこう」という気持ちになりました。

ePARA2020に参加された方々からは、どのような声が寄せられましたか?

ePARA2020開催後の集まりで、部員の皆さんからは、以下のような前向きな声が多く寄せられ、私たちもとても嬉しかったです。

「久しぶりに、心から笑えた!」

「オンラインゲーム大会に初めて参加したが、楽しかった。また、参加したい」

「eスポーツで、もっといろいろな方と交流を持ちたいと思えた」

特に、自分が印象に残っているのは、「コロナ禍で、誰かと交流できる機会がなかったから、ePARAがあって本当に良かった」「目標となるようなイベントがあることで、すごく救われている」という声です。中には、涙を流しながら話してくださった方もいて、この活動を続けていく決意が固まりました。

※ePARA2020の様子は、YouTubeからご覧ください。

こういったイベントをきっかけに、現在は「ePARA学園部活動」を毎週水曜日21時にオンラインで開催しています。部員が集まり、eスポーツを軸とした交流を行っています。

今後の大きなイベントとしては、2021年秋に、『PUBG MOBILE』という、生き残りをかけて戦うバトルロイヤルゲームの企業対抗戦の開催を予定しています。

自分らしく働く機会、チャンスは今

バリアフリーeスポーツは、どのように就労の機会につながりますか?

まず、バリアフリーeスポーツのイベントなどをきっかけに、企業側に障害がある方を知って頂く機会を提供しています。企業の経営者や人事担当の方からお話を伺っていると、障害がある方と接点がないために「どう接して良いか、わからない」というケースが多いと感じています。例えば、障害や病気をお持ちの方と「どう喋って良いかわからない。だから、採用は難しい」ということですね。

そのため、私たちは、企業側に障害がある方の方々を知って頂くことを大切にしています。バリアフリーeスポーツのイベントで実際に障害がある方とコミュニケーションをとることで、多くの場合、「わからない」という課題はクリアになることが多いです。

また、障害の有無に関わらず、誰にでも「強み」「弱み」がありますよね。障害がある方も同じで、まずは強みの部分を積極的に見て頂き、逆に、弱みの部分はどういったケアでカバーできるかも知って頂くように心がけています。

バリアフリーeスポーツをきっかけに、就職につながった患者さんの事例について教えてください。

イベントでの活躍が後押しとなり、実際にパラeスポーツプレイヤーとして活躍している方もいらっしゃいます。

その他にも、バリアフリーeスポーツの大会をきっかけに、ウェブ制作のスキルを生かして内定が決まり、今も働いている方などもいらっしゃいます。eスポーツができるということで、テレワークへも対応できますし、基本的なパソコンのスキルもあるということを示すことができます。ウェブ制作以外にも、イラスト制作、ライティングでの記事制作など、さまざまなお仕事につながっています。

今、コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増えたことで、就労のチャンスは増えていると思います。そのため、病気や障害を理由に、電車に乗って出勤することが難しいという方であっても、リモートワークであれば力を発揮できるケースが多いと感じています。

また、ePARAとしても、障害がある方の方にさまざまな仕事を業務委託しています。上記であげたようなお仕事以外では、翻訳に関わるお仕事をお願いしている方もいらっしゃいます。海外のeスポーツのコーチとのやり取りで、英語のコミュニケーションが必要になったため、英文での契約書作成や、その交渉をお仕事としてお願いし、担当して頂いています。

このように、今後も、病気や障害がある方々が自分らしく働く機会は増えていくと、期待しています。

バリアフリーeスポーツ施設「Any%CAFE」など、今後も活動は広がる

今後の活動展開について、教えてください。

引き続き、バリアフリーeスポーツを通じた障害者就労支援を行いながら、地方自治体とのイベント企画協力も進めています。また、企業とともに障害がある方の躍動を目指した企画も行っていく予定です。

その他、2021年9月、東京都品川駅近くで、バリアフリーeスポーツ施設「Any%CAFE(エニーパーセントカフェ)」の運営を始動しました。車いす利用者も施設を利用でき、eスポーツをリーズナブルな値段で楽しめる会場としてつくりました。

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Any%CAFEオープニングイベントの様子

現在、緊急事態宣言の影響で施設はお休みしていますが、緊急事態宣言が明けたら、利用者参加型プロジェクトを共創するための場所として、活動再開予定です。SNSや公式ウェブサイトで最新の情報を発信していきますので、ぜひご覧ください。

また、ePARAが支援する障害がある方のプロジェクトチーム「Fortia」では、「Blind Fortia」(2021年5月公開)、「FPS Fortia」(2021年7月公開)のほか、特色あるユニットを発表していく予定です。

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Fortiaのイメージ画像(ePARAの部員Suiさん作)

年内では、計5ユニットが誕生予定なので、ぜひ楽しみにしていてください。

当事者の「挑戦」、多くの方々の勇気や希望に

最後に、遺伝性疾患プラスの読者へ一言お願い致します。

新型コロナウイルスの感染拡大により、日々の安定した生活が確保できない人の多い状況が続いています。障害や病気を持つ当事者にとって、その影響はより大きく、きっと希望を見出すことが難しい局面も多いことと思います。

私たちは、そんな今だからこそ、当事者の方々が少しでも自分らしく輝ける場所をつくり、輝ける社会に近づけるよう、バリアフリーeスポーツというテーマを軸にした多種多様な活動を行っています。そして、それはリモートワーク推奨の後押しを受けながら小さな一歩を積み重ね、少しずつ実を結び始めています。

ePARAに関わる当事者の「挑戦」が、少しでも多くの方々の勇気や希望につながることを願うばかりです。


今回のお話では、バリアフリーeスポーツを通じて、さまざまな病気・障害を抱える方々が、生き生きと交流されているということが印象的でした。eスポーツに馴染みのある方はもちろん、そうでない方も「応援」「サポーター」という立ち位置で参加することが可能ですし、その関わり方は無限大です。

さらに、ePARAさんはバリアフリーeスポーツを通じて就労の機会にもつなげており、誰もが自分らしく生きていける社会の実現に向けて活動されている想いが強く伝わってきました。

バリアフリーeスポーツに興味のある方はもちろん、さまざまな方とつながりたいという方もぜひ、ePARAさんの活動に参加されてみてはいかがでしょうか?あなたの挑戦が、あなた自身、もしくは誰かの一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。(遺伝性疾患プラス編集部)

加藤大貴さん

加藤大貴さん

ePARA代表、NPO法人市民後見支援協会 理事

 

ePARA公式ウェブサイト:https://epara.jp/

ePARAへのお問合せ先:https://epara.jp/contact/

Twitter(加藤さん):https://twitter.com/koken_3

Twitter(ePARA):https://twitter.com/ePARA_official

Twitter(Fortia):https://twitter.com/b_fortia