医療的ケア児と向き合うご家族は、困りごとの内容が多岐に渡ります。そのため、「どこに相談して良いか、わからない」といった状況に直面するケースが多いと聞きます。そういった当事者ご家族へ適切な支援をつなぐ「医療的ケア児支援センター」をご存知でしょうか?
医療的ケア児支援センターは、2021年6月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)が成立したことで、都道府県における設置について定められました。現在も全国で設立や整備が進められており、2023年度には全ての都道府県で整備が完了する見通しが立ったそうです。そこで今回は、2022年9月に医療的ケア児支援センターを設置した東京都の取り組みをご紹介します。東京都福祉局障害者施策推進部のご担当者にご協力いただき、詳しくお話を伺いました。
「医療的ケア児等コーディネーター」が相談内容にあわせてご案内
医療的ケア児支援センターは、どのような施設ですか?
医療的ケアが必要なお子様のご家族などから「どこに相談すれば良いかわからない」といったお話を伺い、関係機関と連携して、適切な支援につなげるための相談窓口です。専任の相談員(医療的ケア児等コーディネーター※)がご家族のお話を伺い、手続きや地域の相談窓口、制度についてご案内します。東京都では、区部(東京都立大塚病院内)と多摩地域(東京都立小児総合医療センター内)の2か所に医療的ケア児支援センターを設置しています。
(※)医療的ケアに関わる専門的な知識と経験に基づき、医療的ケアが必要なお子様の支援を総合的に調整するコーディネーター。医療的ケアが必要なお子様への支援のための地域づくりを推進する役割を担う。
医療的ケア児支援センターでは、どのようなことを相談できますか?
医療的ケアが必要なお子様のご家族からは、「〇〇の相談先がわからない」「利用できる制度やサービスを知りたい」「どのような事業所があるのかを知りたい」といったお問い合わせや「医療的ケアの対応が不安」など、さまざまな相談が寄せられています。また、ご家族からのご相談だけでなく、障がいのある方の相談・支援を行っている相談支援専門員などの地域の支援者、自治体職員からのご相談も受け付けています。
東京都の医療的ケア児支援センターには、年間何件の相談が寄せられていますか?
2022年9月に開設し、2023年3月までの7か月間で約250件のご相談・お問い合わせが寄せられました。
実際に、どういった内容の相談が寄せられていますか?
医療的ケアが必要なお子様のご家族からは「住んでいる地域に、医療的ケアが必要な子どもを預かってもらえる保育園がなくて困っている」「子どもの通学時、親の付き添いを求められており、負担になっている」「レスパイト※先を探しているが見つからない」といった、さまざまな相談が寄せられています。
(※)当事者ご家族などの介護する側が、日々の介護から一時的に離れて休むこと。
東京都の場合、どのような関係機関と連携されていますか?
地域の相談支援専門員、医療的ケア児等コーディネーター、医療機関、行政機関、保育所、教育機関など、さまざまな機関と連携しています。
どのような場合に、医療的ケア児等コーディネーターへおつなぎしていますか?
退院や転居等に伴い、お子様の成長やご家族の暮らしを見据えて、保健、医療、福祉、教育など多職種が協働して支援を行う必要がある場合に、地域の医療的ケア児等コーディネーターにつないでいます。
より多くの医療的ケア児を受け入れられる環境を整備していく
現状、医療的ケア児とご家族を取り巻く環境について、特にどういった課題があると感じていますか?
医療的ケアが必要なお子様とご家族の在宅生活を支えていくためには、地域で医療的ケアが必要なお子様を受け入れる福祉・教育などの機関を増やしていくことが求められます。また、各機関で支援を担う職員の育成、地域で支援やサービスの総合調整を行う医療的ケア児等コーディネーターによる活動促進も課題であると感じています。
今後、課題を解決するためにどのような取り組みを行っていきますか?
東京都ではこのような課題を踏まえ、令和5年(2023)度は、ニーズの高い短期入所(ショートステイ)について、より多くの医療的ケアが必要なお子様を受け入れることができるよう、環境を整備するための費用補助や看護師等の配置に係る経費を支援します。
また、医療的ケア児等コーディネーターの活動に要する経費の補助や人材養成のための研修の実施など支援体制の整備を進めています。
遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。
医療的ケア児支援センターは、医療的ケアが必要なお子様、ご家族、支援者の皆様のための相談拠点です。退院後のこと、ご家族のお仕事のこと、保育園や学校のこと、災害時のこと、緊急時のこと、生活の不安や悩みなどお話を伺いますので、ご連絡をお待ちしております。
医療的ケアに関して「どこに相談して良いのかわからない」と思った時は、ぜひお住まいの地域の医療的ケア児支援センターを利用してみてはいかがでしょうか?
また、東京都では、医療的ケア児のライフステージ(在宅移行期・乳幼児期・学齢期)に合わせた支援情報・相談窓口などをわかりやすくまとめたウェブサイト「東京都医療的ケア児支援ポータルサイト」を運営しています。当事者ご家族、支援者、関係機関、それぞれの立場の方々が必要な情報を得られるようにさまざまな情報を発信しています。詳細は、関連リンクにある東京都のウェブサイトからご確認ください。(遺伝性疾患プラス編集部)