18p欠失症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 18p deletion syndrome
別名 18pモノソミー症候群(Monosomy 18p syndrome)、18p-症候群、Chromosome 18p deletion syndrome
発症頻度 出生5万人に1人
子どもに遺伝するか 多くが孤発例
発症年齢 新生児期より
性別 男女とも(男女比は2対3)
主な症状 成長障害、精神発達遅滞、言語の発達の遅れ、特徴的な顔立ちなど
原因遺伝子領域 18番染色体の短腕(18p)の全部または一部欠失
治療 対症療法
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どのような病気?

18p欠失症候群は、成長障害、精神発達遅滞、特徴的な顔立ちなどを主な症状とする疾患です。

この病気の子どもは多くの場合、出生時より低体重で生まれ、乳児期には筋緊張低下が現れます。軽度から中等度の成長障害や精神発達遅滞により、低身長のほか言語や会話能力の獲得に大きな遅れが生じ、7~9歳頃まで簡単な単語や文を話すことができない場合があります。また、集中力の低下、落ち着きのなさ、急な気分の変化(情緒不安定)など、行動や感情に異常を示す場合もあります。

また、顔立ちの特徴として、とても小さい頭(小頭症)、人中(唇上部の溝)が短く丸い顔、広く平らな鼻、眼瞼下垂、大きく突き出た耳、上唇が突き出し逆V字型になる、両方の目が離れる(両眼隔離症)などがありますが、これらの特徴が現れる範囲や程度は個人によってさまざまです。

この病気の約1割の人で、「全前脳胞症」と呼ばれる重篤な状態を示す場合があります。全前脳胞症は、胎児期に前脳が正常に形成されず右脳と左脳が正常に分かれないことで起こり、てんかんなどのほか、重度の場合には乳児期や小児期に命に関わるような合併症を引き起こすことがあります。全前脳胞症では顔面の中央部分の発達に異常を引き起こし、上の前歯の中央の歯(上顎切歯)が1本となる、目の間隔が狭くなるか単眼症、口唇口蓋裂などが見られることもあります。

そのほか、リンパ浮腫、手足が小さい、指が短い、小指が異常に曲がるなどの手足の形態異常、男性において小さい陰茎や停留精巣、免疫グロブリンAの欠乏、幼児期からの脱毛症などが見られる場合もあります。また、これまでに約5%程度で先天性の心疾患も報告されています。

18p欠失症候群で見られる症状

高頻度に見られる症状

対耳輪(耳介の軟骨でできたひだ)の形態異常、突出していて目立つ耳、短指症、短い人中、減歯症(歯の数が少ない)、低身長、言語の発達の遅れ、全般的発達遅滞、知的障害

良く見られる症状

短頭症、小頭症、目頭部分を上まぶたが覆う(内眼角贅皮・ないがんかくぜいひ)、眼瞼下垂、広い鼻梁(びりょう)、大耳症、口蓋裂、口角が下がっている、歯の位置の異常、小顎症、後頭部毛髪線低位(後頭部の皮膚が下に伸びて生え際の位置が低い)、短い首、翼状頸(首の側面に沿って肩まで続くひだがある)、胸郭拡大、漏斗胸(胸の一部が陥没)、乳頭開離、虫歯が多い、筋緊張低下、脊柱後湾症、高血圧

しばしば見られる症状

小眼球症、心血管系の形態異常、脱毛症、全身性ジストニア、全前脳胞症、甲状腺機能低下症、自己免疫、行動異常

18p欠失症候群の発症頻度は、出生約5万人に1人と推定されています。18p欠失症候群は、男性より女性の方が多く、2対3の割合であるとされています。

何の遺伝子が原因となるの?

18p欠失症候群は、18番染色体の短腕の一部もしくは全部が欠失(何らかの原因により失われること)することによって引き起こされます。この病気の症状や特徴は、欠失した部分にある複数の遺伝子の機能と関連していると考えられ、これまでに、染色体のくびれの部分であるセントロメアに近い領域18p11.1から18p11.21と呼ばれる領域がこの病気の症状の一つである精神発達遅滞と関わるとされる報告もあります。しかし、18番染色体の欠失が、どのようにこの病気で引き起こされる症状の原因となるのかの詳細についてはまだわかっていません。

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この病気において、全体の6割では、両親はこの病気を発症しておらず孤発例として18番染色体の末端の欠失が新しく発生したことによるものです。残りの3割は、18番染色体の短腕(18p)の欠損を伴うような転座などの特別な染色体の状態が原因となります。その場合、子どもにおいて新しく発生する不均衡型転座(重複や欠失がある転座)のほか、病気を発症していない親の染色体が均衡型転座(異なる染色体間で一部が入れ替わるが全体は重複や欠失が無い転座)で、子どもが引き継ぐ時に不均衡型転座となることでこの病気を発症することがあります。また、18p欠失症候群である親から、子どもに遺伝する例も報告されています。

どのように診断されるの?

国内において、18p欠失症候群の確立した診断基準は設けられていません。

18p欠失症候群の主要な症状である低身長や精神発達遅滞などを特徴とする疾患は複数あり、症状だけでこの病気であることを診断することは難しいため、確定診断を行うには遺伝学的検査が必要になります。妊娠中の出生前診断でこの病気が発見されることもあります。

どのような治療が行われるの?

18p欠失症候群を根本的に治療する方法はまだ確立されていません。そのため、それぞれの症状に対する対症療法が主な治療となります。言語の発達に困難を抱える場合には、言語療法や教育プログラムなどによる介入が行われます。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で18p欠失症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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