CADASIL

遺伝性疾患プラス編集部

  • 2022.12.28 公開 (最終更新: 2023.01.23)
  • CADASIL
CADASILの臨床試験情報
英名 CADASIL
別名 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、CASIL、CADASIL1など
日本の患者数 約1,200人と推定
発症頻度 10万人に2~4人と推定
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝形式]
発症年齢 20~30歳頃
性別 男女とも
主な症状 片頭痛発作、脳梗塞、抑うつ症状、認知症症状など
原因遺伝子 NOTCH3遺伝子
治療 対症療法
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どのような病気?

CADASIL(カダシル、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は、脳の細い血管が傷つくことにより、片頭痛、脳梗塞、一過性脳虚血発作(一時的に短時間だけ現れる脳卒中症状)などを始めとした脳の症状が主に見られる遺伝性疾患です。この病気では多くの場合、頭部MRI検査で脳の中に白質病変とよばれる状態が認められることが特徴です。

この病気の経過として、約半数では20~30代に片頭痛を認め、また、多くの場合40~60代にかけて脳梗塞の発症が見られるとされます。一方で、一部の人では後年になるまで病気の兆候を示さない場合もあるなど、CADASILの症状が始まる年齢や症状の重症度は、個人によって大きく異なります。

片頭痛の症状は、多くの場合頭の片側もしくは両側において、ズキンズキンと響くような痛みが4時間から3日間程度続きます。痛みが強く生活に支障をきたすことや、吐き気を感じることもあります。片頭痛の前兆として、目の前にギザギザした光がみえた後でその部分が暗くなり見えにくくなる、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる症状が見られることがあります。

脳梗塞は、脳の血管が細くなったり詰まったりすることにより酸素や栄養が足りなくなり、脳細胞が傷つくために引き起こされます。歩く、しゃべる、手を動かすなどの動作が思うようにできなくなり、認知症につながることもあります。詰まる血管の場所や太さ、詰まり方などによって症状もさまざまです。CADASILでは特に、脳の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」という脳梗塞を発症することが多いと言われ、脳梗塞が何度も再発することがあり、再発によって動きにくさや認知症の症状がさらに悪化することがあります。

脳の血管の損傷から、その他にもてんかん発作、視力への影響、重度のうつ病、行動や性格の変化などが症状として見られる場合があります。また、一部において高血圧や心臓発作のリスクが高くなる人もいます。うつの症状は脳梗塞の再発を繰り返すことによって現れやすいとされ、人によっては何に対しても興味を示さない無気力の症状が見られることもあります。また、脳梗塞の再発によって、ものが覚えられない、考えるスピードが落ちる、注意力が落ちるなどの認知症の症状が現れることもあります。

CADASILで見られる症状

高頻度に見られる症状

大脳白質形態異常、白質脳症

良く見られる症状

脳虚血、脳卒中、一過性脳虚血発作、片頭痛、前兆を伴う片頭痛、認知障害、無気力、情緒不安定

しばしば見られる症状

脳萎縮、脳出血、脳症、頭蓋内出血、虚血性脳卒中、皮質下梗塞の再発、構音障害、嚥下障害、歩行障害、片麻痺、腹圧性尿失禁、運動能力の喪失、痙性(けいせい)、パーキンソニズム(震え、硬直、動きの遅さ、歩行困難など)、動脈狭窄、高血圧、言語障害、てんかん発作、視空間認知障害、意識の喪失、記憶障害、認知症、不安、うつ、錯乱

非常にまれに見られる症状

失語症

CADASILは、海外の患者登録データなどから、10万人に2~4人の頻度で発症すると推定されており、日本には少なくとも1,200人ほどの患者さんがいると推定されていますが、この病気であることを気が付かれず診断されていない人が多くいると考えられており、正確な発症頻度は不明です。また、最近のゲノム解析により、この病気を引き起こす遺伝子変異が起こる頻度はもっと高いと推定されるという報告もあります。これまでにCADASIL患者さんの多くがヨーロッパで確認され報告されていますが、この病気は人種による偏りはなく世界中のあらゆる場所で確認されています。

CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は指定難病対象疾病(指定難病124)となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

CADASILは、19番染色体上の19p13.12と呼ばれる領域にあるNOTCH3遺伝子の変異が原因となって発症することがわかっています。NOTCH3遺伝子は、主に血管で働くNOTCH3タンパク質の設計図となります。NOTCH3タンパク質は、血管平滑筋(けっかんへいかつきん)細胞と呼ばれる血管を構成する細胞において、血管壁の正常な機能を保つ役割を持つと考えられています。血管平滑筋細胞は、収縮や拡張を行うことで血圧を調節する機能を持っています。CADASILでは、NOTCH3遺伝子の変異により、異常なNOTCH3タンパク質が作り出され、血管平滑筋細胞の傷害につながると考えられています。脳において細い血管の血管平滑筋細胞が壊されることにより血管の損傷が起こり、血液の供給が少なくなることで脳梗塞などの症状が引き起こされる可能性があります。しかし、NOTCH3遺伝子の変異からどのようにして血管平滑筋細胞の破壊につながるのかについて、詳細な仕組みはまだわかっていません。

CADASILは常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。親が病気の場合、病気が子どもに引き継がれる確率は50%です。まれに、家族には病歴がないものの、新しい変異が原因でこの病気を発症する(孤発例)場合があります。

Autosomal Dominant Inheritance

どのように診断されるの?

この病気の診断基準として、

1)常染色体優性遺伝形式であること、

2)MRI/CTで、側頭極を含む大脳白質病変が認められること

の2つを満たしており、遺伝学的検査でNOTCH3遺伝子の変異を認めるかまたは、皮膚などの組織における電子顕微鏡の検査でGOM(オスミウムに濃染する顆粒)を認めた場合にこの病気の診断が確定となります。

また、上記の1)2)に加えて、下の3)から5)を全て満たすものの、遺伝学的検査やGOMの検索が行われていない場合にはこの病気の疑いとなります。

3)下記a)からd)のうち、2つ以上の症状を認める

     a)皮質下性認知症、錐体路徴候、偽性球麻痺のうちの1つ以上

     b)神経症状を伴う脳卒中様発作

     c)うつ症状

     d)片頭痛

4)55歳以下の発症[大脳白質病変か3)の症状]

5)白質ジストロフィーを除外できる[副腎白質ジストロフィー(ALD)、異染性白質ジストロフィー(MLD)など]

どのような治療が行われるの?

CADASILに対する根本的な治療はまだなく、脳梗塞に対する治療や、それぞれの症状に応じた対症療法がとられます。新しい治療法に関する臨床試験も実施されています。

この病気の注意点として、一般的な脳梗塞に対する注意点と同様に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの予防や適切な治療の他、喫煙や過度の飲酒などにも注意が必要です。脳梗塞の後遺症がある場合には、運動機能が低下しないようにリハビリや体操などを行うことや、日常生活では、転倒や骨折、誤嚥性肺炎などにも注意が必要です。脳梗塞の再発にも注意し、動きにくい、喋りにくいなどの症状が見られた場合には早期の受診が必要になります。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でCADASILの診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

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