エマヌエル症候群

遺伝性疾患プラス編集部

エマヌエル症候群の臨床試験情報
英名 Emanuel Syndrome
別名 22番過剰派生染色体症候群、11/22混合トリソミー、部分トリソミー11/22、Der(22) syndrome due to 3:1 meiotic disjunction events、Supernumerary der(22) syndrome、Supernumerary der(22)t(11;22) syndrome、Supernumerary derivative 22 chromosome syndrome
発症頻度 不明
日本の患者数 数十人(令和4年度末現在特定医療費(指定難病)受給者証所持者数5人)
子どもに遺伝するか 遺伝する場合がある
発症年齢 新生児期より
性別 男女とも
主な症状 全般的発達遅滞、特徴的な顔立ち、先天性心疾患など
原因遺伝子領域 11番染色体と22番染色体の転座による過剰染色体
治療 対症療法
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どのような病気?

エマヌエル症候群は、染色体異常によって正常な発達が障害され、体のさまざまな部位に不具合が起こる疾患です。エマヌエル症候群では乳児期から筋緊張低下、発育障害、精神遅滞、小頭症、発育障害、腎異常、心疾患などの症状がみられます。

エマヌエル症候群で見られる症状

高頻度に見られる症状

全般的発達遅滞(運動機能、対話・言語機能、認知機能、社会機能、感情機能などが全般的に遅延すること)

よく見られる症状

大動脈弁狭窄症、広い顎、脳萎縮、先天性股関節脱臼、便秘、停留精巣(睾丸が陰嚢に降りずに停留している状態)、深い眼、萌出遅延(永久歯が遅く生えること)、会話・言語発達遅延、歯の密生、嚥下障害(食物や水分を飲み込む機能の障害)、異所性肛門(肛門の位置の異常)、発育不良、摂食障害、胃食道逆流、全般的筋緊張低下、発達遅延、聴覚障害、高口蓋(上あごの前歯の裏側のくぼみが深いこと)、性腺機能低下症、不妊、知的障害、脊柱後湾症、長い人中(人中は鼻の下の唇の溝)、下方に伸びた鼻柱(鼻柱は左右の鼻の孔の間の部分)、低い位置の耳、低い位置の乳首、大耳症、小顎症、小陰茎症(男性器が小さいこと)、近視、耳瘻孔(耳の周囲の小さい孔)、耳の前の皮膚の小さな突起物)、肺動脈弁狭窄症、繰り返す感染症、繰り返す中耳炎、繰り返す呼吸器感染症、脊柱側弯症、てんかん発作、斜視、過剰肋骨(肋骨の数が多いこと)、歯の位置の異常、総動脈幹症(心臓から血液を送り出す大動脈と大静脈がひとつになっている状態)、眼瞼裂斜上(眼がつり上がっていること)

しばしば見られる症状

灰白質形態異常(灰白質は脳の部位)、足の奇形、脳梁発達不全(脳梁は左右の大脳半球をつなぐ繊維の束)、肛門閉鎖症、乱視、心房中隔欠損症(左右の心房を隔てる中隔の欠損)、口蓋垂裂(のどちんこが割れている状態)、逆子(妊娠中に胎児の足や臀部が下方に位置している状態)、キアリ奇形(小脳・大脳の一部が脊柱管内に入っている奇形)、口蓋裂(口の中の天井に相当する口蓋が裂けている状態)、先天性横隔膜ヘルニア(体内で胸部と腹部を分ける横隔膜に穴が開いている状態)、咳、ダンディー・ウォーカー奇形(脳の形態異常)、胎動減少(妊娠中の胎児の動きの減少)、水頭症(脳髄液が脳室に溜まっている状態)、遠視、鼠径ヘルニア(脱腸)、子宮内発育遅延(妊娠中の胎児の発達遅延)、小頭症、関節拘縮、羊水過少症、動脈管開存症(胎児期に大動脈と肺動脈をつないで、生後間もなく閉鎖する動脈管が閉鎖しないで存在する状態)、早産、眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がっている状態)、繰り返すカンジダ感染、首の皮膚の余剰、腎形成不全、仙骨部皮膚陥凹(尾骨の上の皮膚の陥凹)、重度聴覚障害、粘膜下口唇裂(粘膜下で上唇が割れている状態)、片側性腎無形成(片側の腎臓が欠如していること)、心室中隔欠損症(左右の心室を隔てる中隔の欠損)、脳室拡大(脳室は脳脊髄液で満たされた部分)

エマヌエル症候群の有病率はわかっていません。北米では約200人の患者さんがいるとされ、日本では数十人の患者さんがいるとされています。

エマヌエル症候群は指定難病対象疾病(指定難病204)に指定されています。

何の遺伝子が原因となるの?

エマヌエル症候群の原因は染色体異常です。通常、ヒトの染色体は46本ですが、エマヌエル症候群では1本の異常な染色体が余分に作られ、47本になります。2つの染色体の一部が入れ替わることを転座と呼び、エマヌエル症候群では11番染色体のq23という部分と22番染色体のq11という部分の転座によって、22番染色体由来の異常な染色体が作られて、染色体が47本となります。この余分に作られた異常な染色体(派生染色体)が体のさまざまな部位の正常な発達を障害することがエマヌエル症候群の原因であると考えられています。この派生染色体には多くの遺伝子が含まれており、どの遺伝子がエマヌエル症候群の発症に関与しているのかはまだわかっていません。また、22番染色体と11番染色体の間で転座が起こっても、遺伝子の数が増えない場合を均衡型転座と呼び、米国衛生研究所によると、エマヌエル症候群の一部はこの均衡型転座によるとされています。

ほとんどのエマヌエル症候群の患者さんは、上記の派生染色体を発症していない親から受け継ぎます。親が上記の均衡型転座を持っている場合、親は健康上の問題はありませんが、保因者となります。しかし均衡型転座は子に受け継がれた場合には過剰な染色体を産生する不均衡型転座を生じる原因となります。一方で均衡型転座が子に受け継がれる場合もあり、その場合には子は健康上の問題はなく親と同様に保因者となります。

どのように診断されるの?

難病情報センターでは以下のような診断基準が示されています。

子宮内発育不全があり、特異顔貌(小頭症、耳前の小孔や小突起など)、口蓋裂、小下顎(ピエールロバン連鎖)、先天性心疾患(心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈間開存など)などからエマヌエル症候群を疑い、染色体検査で以下の異常があった場合に診断する。

<染色体検査>

11番染色体のq23という部分と22番染色体のq11.2という部分の転座による22番染色体由来の異常な染色体の存在による計47本の染色体

どのような治療が行われるの?

エマヌエル症候群の治療は現時点では対症療法のみです。米国の遺伝性疾患情報サイト「GeneReviews」では、以下のような治療が示されています。

・発育障害に対しては胃食道逆流に対する治療および栄養補助や経腸栄養

・異所性肛門や鼠径ヘルニアに対する外科的治療

・心血管奇形、口蓋裂、股関節脱臼などの骨格筋合併症、聴覚障害、停留精巣、小陰茎症、眼疾患、てんかん発作、などに対する標準的な治療

・発達を最適化するための身体療法、作業療法、会話・言語療法

・言語能力が制限されている場合、コミュニケーションを容易にするための代替方法の考慮

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でエマヌエル症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

エマヌエル症候群の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

参考サイト

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