どのような病気?
GNAO1異常症は、16番染色体上にあるGNAO1遺伝子に変異が起きることで引き起こされる遺伝性疾患です。この病気は、主に脳や神経発達に症状が見られる病気で、発達の遅れや乳児期から始まるてんかん症状、運動障害を引き起こします。GNAO1遺伝子は、2013年に横浜市立大学の研究グループによって、治療薬が効きにくい難治性てんかんの原因遺伝子として報告されました。その後の研究によってこの遺伝子の変異が精神運動発達遅滞や筋緊張低下など複数の症状の原因となることがわかってきましたが、まだ不明な点が多い病気です。
これまでに明らかになっている症状としては、乳児期に始まるてんかん発作、重度から軽度の知的障害、筋緊張低下(筋肉の張りが弱くなる症状)、さまざまな不随意運動(舞踏病と呼ばれる足や手の不規則な筋肉の動き、顔と舌を無意識に動かすジスキネジア、身体が突っ張ったりねじれたりするジストニア、短時間の筋収縮がおこるミオクローヌスなど)を始めとする運動の異常、経口摂取不良、発語障害などです。これらの症状は、強い感情、体調不良、意図的な動きなどがきっかけになって引き起こされることがあるとされます。GNAO1異常症の重症度はさまざまであり、手助けなく話すことや歩くことができる場合もあればどちらも難しいという場合もあります。てんかんに関しても、症状がほとんど見られない場合もあれば、深刻なてんかん発作が引き起こされる場合もあります。また、舞踏病とジストニアの悪化により多動運動の「ストーム」と呼ばれる、生命を脅かす可能性もある危険な症状が引き起こされることもあります。
GNAO1異常症について、正しい発症頻度や患者数はわかっていませんが、米国に本部を置く、ボウ財団(the Bow Foundation)のウェブサイトによると、約200人のGNAO1異常症患者さんが確認されています。一方で、GNAO1異常症であると気づかれず、原因不明の筋緊張低下や精神運動発達遅滞、アテトーゼ型脳性麻痺などと判断され未診断となっている患者さんがいると考えられています。
何の遺伝子が原因となるの?
GNAO1異常症は、16番染色体の16q13と呼ばれる領域にあるGNAO1遺伝子の変異によって引き起こされます。GNAO1遺伝子は、Gαo1(ジーアルファオーワン)と呼ばれるタンパク質の設計図であり、このGαo1は、三量体Gタンパク質と呼ばれる3つのタンパク質からできる複合体のα(アルファ)サブユニットを構成するタンパク質として、細胞内のシグナル伝達に関与します。シグナル伝達とは、他の細胞や組織から来たホルモンや酵素などの情報を細胞の中に伝え、情報を受け取った細胞に特定の遺伝子を働かせてタンパク質を作らせるなどの変化を促す仕組みのことです。Gαoは中枢神経に多く存在し、脳の中心部にある意思決定や運動処理に関与する大脳基底核の主要な部分におけるシグナル伝達に重要な役割を持つタンパク質です。GNAO1遺伝子の変異によって、シグナル伝達の異常が起こり、この病気の症状が引き起こされると考えられます。
この病気は常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。
どのように診断されるの?
この病気は、2013年に発見されたばかりの病気であり、まだ診断方法は確立されていません。
GNAO1異常症は、てんかんが見られない場合もあるなど症状がさまざまで、血液検査やMRI検査においても診断につながる症状は見られず、症状や所見では診断が難しい病気であるため、遺伝学的検査によりGNAO1遺伝子に変異などが発見されることで診断されることが必須となっています。
未診断疾患イニシアチブ(IRUD)による全エクソームシーケンスで診断確定された報告もあります。
どのような治療が行われるの?
ボウ財団によれば、GNAO1異常症に対する根本的な治療法は今のところまだなく、それぞれの症状に応じた対症療法がとられます。
例えば、てんかん症状を持つ場合には、抗てんかん薬による治療、重度の多動性運動が存在する場合には、深部脳刺激療法などがとられる場合もあります。しかし、この病気の経過はまだわかっていないことが多く、症状に対する適切な治療法の多くは研究中です。
どこで検査や治療が受けられるの?
患者会について
難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。
米国のGNAO1異常症の患者支援団体(財団)で、ホームページを公開しているところは、以下です。