歌舞伎症候群

遺伝性疾患プラス編集部

歌舞伎症候群の臨床試験情報
英名 Kabuki syndrome
別名 歌舞伎メーキャップ症候群、ニイカワ-クロキ症候群
日本の患者数 約4,000人(令和4年度末現在特定医療費(指定難病)受給者証所持者数19人)
海外臨床試験 海外で実施中の試験情報(詳細は、ページ下部 関連記事「臨床試験情報」)
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体優性(顕性)遺伝)、ただし家系の報告はほとんどない
発症年齢 生まれつき
性別 男女とも
主な症状 特徴的な顔貌(切れ長の目など)、骨格異常、精神遅滞、成長障害など
原因遺伝子 KMT2D(MLL2)遺伝子、KDM6A遺伝子
治療 対症療法
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どのような病気?

歌舞伎症候群は、先天性の病気のひとつで、特徴的な顔だちがあります。具体的には目が切れ長で下まぶたの外側3分の1が裏返って外にめくれている、弓状で広い眉毛、鼻柱が短く鼻先がつぶれている、耳が大きく突き出しているか、耳の外側がカップ状にすぼまっている(カップ耳)、などの特徴があります。特に目の特徴が、歌舞伎役者の「隈取」という化粧を連想させることから、この名前が付けられました。

顔の特徴以外では、骨格異常(軽微)、生まれつきの指先の膨らみ、知的障害(軽度~中度)、出生後の成長障害(低身長)、先天性心疾患、腎尿路生殖器異常、口唇裂口蓋裂、消化管異常、眼瞼下垂、斜視、歯と歯の隙間が広がる(歯間空隙の拡大)、歯牙低形成、などが見られる場合があります。

さらに、感染症にかかりやすい、自己免疫疾患、けいれん、消化管異常による摂食の問題、口蓋裂による中耳炎や難聴、女児の早期乳房発育症を含む性早発なども挙げられます。

症状の違いや重症度は、個人差が大きいとされています。指定難病対象疾病です(指定難病187)。

症状が似ている病気として、チャージ症候群、22q11欠失症候群、IRF6関連疾患(ファンデルヴォウデ症候群と膝窩翼状片症候群)、鰓・耳・腎(BOR)症候群、エーラスダンロス症候群関節可動性亢進型、ラーセン症候群、X染色体異常、Hardikar症候群などがあります。

何の遺伝子が原因となるの?

「KMT2D遺伝子(別名MLL2遺伝子)」および「KDM6A遺伝子」が、歌舞伎症候群の原因遺伝子として、これまでに見つかっている遺伝子です。歌舞伎症候群と診断された人のうち、85%前後で、これらの遺伝子に変異が見つかります。残りの人たちは、これらの遺伝子に変異がなくても、歌舞伎症候群と診断される患者さんで、今のところは原因不明ということになります。

KMT2D遺伝子とKDM6A遺伝子からは、「ヒストン修飾」に関わるタンパク質が作られることがわかっています。「ヒストン修飾」とは、さまざまな遺伝子の制御(使われ方)に関連する現象です。これらの遺伝子変異により正常でないタンパク質が作られ、ヒストン修飾が正しく行われなくなることが、この病気の原因と考えられています。

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歌舞伎症候群の遺伝子変異は、大部分が両親では変異がなく、子どもで新たに発生するものです(新生変異)。したがって、この病気の「家系」がみられる例はほとんどありません。一方、歌舞伎症候群の患者さん自身が子どもを持つことは可能なので、親から子への遺伝は50%であり得ます。

なお、歌舞伎症候群になりやすい人やなりにくい人がいるという考え方は、今のところありません。

Autosomal Dominant Inheritance
常染色体優性(顕性)遺伝

どのように診断されるの?

「どのような病気?」にあるような、主要な症状から歌舞伎症候群が疑われ、「何の遺伝子が原因となるの?」で挙げた2つの遺伝子を調べた結果、どちらかに変異が認められた場合、歌舞伎症候群と診断が確定します。

2つの遺伝子に変異が認められなくても、乳幼児期から「特徴的な顔だちを含む主要な臨床症状」「指先の隆起」「精神発達遅滞」が見られた場合には、歌舞伎症候群と診断されます。日本小児遺伝学会は、歌舞伎症候群診断の手引きを2014年に作成し、診断方法について示しています。

また、診断後、その人ごとに現れている各症状に対して、専門的な検査が行われます。

 

どのような治療が行われるの?

今のところ、歌舞伎症候群を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。一方で、この病気の人に出やすい症状は、「1.歌舞伎症候群はどのような病気?」に書かれているように、ある程度わかっています。したがって、こうした症状に対する治療が行われています。

例えば、摂食が困難なため胃ろうにする、自閉症の症状があるため発達小児科や精神科医から専門的な治療を受ける、けいれんがあるため抗てんかん薬を飲む、などです。このように、場合によって、薬による治療だったり、手術による治療だったりします。複数の症状がある場合には、それぞれの専門医に定期的に診てもらうなど、その人の状況に合った治療を受けることになります。

また、歌舞伎症候群と診断された人は、発達の確認のため、最低1年に1回、身長・体重・頭囲の測定を受けます。また、年に1回、視力と聴力の測定も受けます。

世界的にも、まだ歌舞伎症候群に特化した治療法の開発は行われていませんが、それに向けての第一歩は、歌舞伎症候群の発症メカニズムを十分に解明することです。そうした研究は、世界各国で行われており、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立医学図書館(NLM)が運営する、世界の医学論文データベース”PubMed”で「Kabuki syndrome」と検索すると、2023年5月現在、553件の研究論文がヒットします。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で歌舞伎症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

※オンライン医師Q&Aサイト「アスクドクターズ」で歌舞伎症候群に関するQ&Aをご覧いただけます。(アスクドクターズのページに移動します。Q&Aを見るには無料会員登録が必要です。)

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

・参考文献:医学書院 医学大辞典 第2版

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