どのような病気?
ルビンシュタイン・テイビ症候群は、特徴的な顔立ち、幅広い拇指趾(手と足の親指)、精神運動発達遅滞などの症状がみられる先天異常症候群です。ルビンシュタイン・テイビ症候群では各種臓器のほか、頭部・顔面、四肢・体幹、皮膚、神経系などの体のさまざまな部位に合併症がみられます。
ルビンシュタイン・テイビ症候群で見られる症状 |
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高頻度に見られる症状 短指症、幅の広い足の親指、幅の広い手の親指、かぎ鼻、眼瞼裂斜下(目尻の下がった眼)、幼児期の発育不良、幼児期の摂食障害、全般発達遅滞(運動機能、対話・言語機能、認知機能、社会機能、感情機能などが全般的に遅延すること)、高口蓋(上あごの前歯の裏側のくぼみが深いこと)、離れた眼、知的障害、関節過伸展(関節が正常範囲を超えて伸展すること)、低い位置の耳、低身長 |
よく見られる症状 末節骨形態異常(末節骨は指の先端の骨)、心血管系形態異常、歯の形態異常、不安症、注意欠如・多動性障害(ADHD)、虫歯、小指湾曲、太鼓バチ状の足の親指、便秘、停留精巣(片側または両側の精巣が陰嚢の中に降りていない状態)、内眼角贅皮(眼頭にかかる皮膚のひだ)、多毛症、緑内障、アーチ型の眉、易興奮性、小頭症、小顎症、鼻涙管閉塞症(眼と鼻腔をつなぐ鼻涙管の閉塞)、呼吸障害、斜視、低い鼻梁(低い鼻すじ) |
しばしば見られる症状 皮膚の瘢痕、毛細血管腫、合指症(隣り合う指が癒合している状態)、聴覚障害、大腿骨脱臼、ケロイド、羊水過多、眼瞼下垂(まぶたの下垂)、てんかん発作 |
ルビンシュタイン・テイビ症候群の発症頻度は新生児10万人から12.5万人に1人と推測されています。日本の患者数は100人から200人とされています。
ルビンシュタイン・テイビ症候群は指定難病対象疾病(指定難病102)および「ルビンシュタイン・テイビ(Rubinstein-Taybi)症候群」として、小児慢性特定疾病に指定されています。
何の遺伝子が原因となるの?
ルビンシュタイン・テイビ症候群のほとんどは家族歴がない状態で発症しており、その原因はCREBBP遺伝子またはEP300遺伝子の変異によるとされています。ルビンシュタイン・テイビ症候群の患者さんの約半数はCREBBP遺伝子の変異が原因となっているとされています。CREBBP遺伝子を設計図として産生されるCREB結合タンパク質は妊娠中の胎児の細胞の成長や分裂などを制御して、体の発達に重要な役割を担っています。CREBBP遺伝子の変異や欠失によって正常なCREB結合タンパク質の産生が低下すると出生前後の正常な発達が障害されます。まだ十分には解明されていませんが、ルビンシュタイン・テイビ症候群でみられる知的障害は脳の発達の障害によると考えられています。
海外の報告では、ルビンシュタイン・テイビ症候群の一部の患者さんはEP300遺伝子の変異によって発症するとされています。CREBBP遺伝子と同様にEP300遺伝子を設計図として産生されるタンパク質は出生前後の発達に関与し、EP300遺伝子の変異によってそのタンパク質の機能が低下することで発達が障害されると考えられています。ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因がEP300遺伝子の変異による場合にはその症状はCREBBP遺伝子の変異による場合よりも軽症であるとされています。
ルビンシュタイン・テイビ症候群の中には16番染色体にあるCREBBP遺伝子を含む複数の遺伝子の欠失が生じている場合があり、多数の遺伝子の欠失は重篤な合併症を生じやすいと考えられています。また、ルビンシュタイン・テイビ症候群の患者さんの30~40%はCREBBP遺伝子、EP300遺伝子、16番染色体の一部の欠失のいずれも認められていないことから、ルビンシュタイン・テイビ症候群には他の遺伝子変異の関与も考えられています。
ルビンシュタイン・テイビ症候群は常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。両親のどちらかがルビンシュタイン・テイビ症候群である場合、子どもは50%の確率で発症します。
どのように診断されるの?
国内の難病情報センターでは以下のルビンシュタイン・テイビ症候群の診断基準を提示しています。
必発症状:精神発達遅滞
主要症状:(1)幅広の母指・幅広の母趾、(2)コルメラ(鼻柱)の延長、(3)濃い眉毛・長い睫毛
<確定診断>
1)主要症状のいずれかから本症を疑い、原因遺伝子(CREBBP遺伝子、EP300遺伝子等)に変異を認める。
2)主要症状のいずれかから本症を疑い、CREBBP遺伝子を含む16番染色体短腕に欠失を認める。
<臨床診断>
精神発達遅滞を伴い、主要症状の(1)~(3)を満たす。
どのような治療が行われるの?
ルビンシュタイン・テイビ症候群に対する根本的な治療方法はありません。各種の病態や合併症に対する対症療法やその進展を予防するための介入が行われます。米国の遺伝性疾患情報サイトGeneReviewsにはルビンシュタイン・テイビ症候群の管理について以下が示されています。
<発達遅延・知的障害・神経学的異常への対応>
・0~3歳:作業療法、理学療法、言語療法、食事療法、メンタルヘルス、特殊教育、感覚障害の治療
・3~5歳:運動機能、言語機能、社会機能、認知機能などに応じた個別の教育プランの決定と実施
<運動機能障害への対応>
・運動機能を最適化し、整形外科的合併症を予防するための理学療法
・必要に応じて医療機器や矯正器具(車椅子、矯正器具、バスチェアなど)の使用
・筋緊張異常に対しては専門家による支援のほか、バクロフェン(抗痙縮薬)、チザニジン(筋弛緩薬)、ボトックス、抗パーキンソン薬の使用
・作業療法
・食事療法、摂食障害が重度の場合チューブ栄養
<神経学的異常への対応>
・脊髄異常の検出のための超音波検査
・てんかん発作がある場合には脳波検査
・神経症状があれば脊柱管のMRI
・必要な場合には自閉症スペクトラム障害への対応
・必要に応じて注意欠陥・多動性障害への対応
どこで検査や治療が受けられるの?
日本でルビンシュタイン・テイビ症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。
※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。
患者会について
難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。
参考サイト
- 難病情報センター
- 小児慢性特定疾病情報センター ルビンシュタイン・テイビ(Rubinstein-Taybi)症候群
- MedlinePlus
- Genetic and Rare Diseases Information Center
- GeneReviews