どのような病気?
乳児発症STING関連血管炎(STING-associated vasculopathy with onset in infancy:SAVI)は、体内でI型インターフェロン(IFN)という物質が過剰に産生され、IFNによって誘導された炎症が持続する疾患です。IFNは生体内で病原体や腫瘍細胞などの増殖を抑制するために産生される、サイトカインとよばれるタンパク質のひとつです。
SAVIの主な症状としては、発熱、皮膚障害、呼吸器障害などがあります。SAVIの発症年齢は出生直後から20歳以降までさまざまですが、重症例では出生直後から発熱や紅斑、紫斑などがみられることがあります。また、SAVIでは肺炎や気管支炎、皮膚感染症などの微小血管炎に関連する感染症を合併することがあります。
厚生労働科学研究で示されたSAVIの症状とその頻度を以下に示します。
全身症状 発熱(77.8%) |
皮膚症状 爪の欠損/形態異常(85.0%)、指趾壊疽(手や足の指が壊死する状態)(69.6%) |
呼吸器症状 間質性肺炎(92.0%)、呼吸機能検査異常(83.3%)、傍気管リンパ節腫脹(77.8%)、肺線維症(76.9%) |
検査所見 炎症反応の上昇(96.3%)、高IgG血症(75.0%)、高リン脂質抗体陽性(75.0%)、抗核抗体陽性(56.5%)、PR3-ANCA陽性(好中球細胞質抗体陽性)(28.6%) |
SAVIの正確な有病率は不明です。国内の患者さんは5人程度と推定されています。
何の遺伝子が原因となるの?
SAVIは免疫機能に関わるSTINGというタンパク質の設計図であるTMEM173という遺伝子の変異が原因で発症します。STINGタンパク質は炎症を誘導するサイトカインであるI型IFNの産生を促進します。SAVIにおけるTMEM173遺伝子の変異は機能獲得性変異と呼ばれるもので、これによってSTINGタンパク質の活性が亢進され、I型IFNの産生が促進されることでさまざまな組織で炎症が生じやすくなります。機能獲得性変異とは、通常はある事象に対して機能を持たない遺伝子が変異によって機能を獲得することを指します。
ほとんどの場合、患者さんにはSAVIの家族歴はなく、TMEM173遺伝子の変異は突然変異によります。SAVIは常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。両親のどちらかがSAVIである場合、子どもは50%の確立で発症します。
どのように診断されるの?
厚生労働科学研究成果データベースでは以下の診断方法が示されています。
Aの症状で①または2つ以上があり、Bの検査で炎症反応が陽性で、Cの遺伝子検査でTMEM173の機能獲得型変異が確認されればSAVIの診断が確定します。Aの症状があり、Bの検査が陽性でCで遺伝子変異が確認されない場合にはSAVIの疑いと診断されます。
A.症状
①間質性肺疾患または肺線維症
②皮膚症状または爪の欠損/形成異常
③繰り返す発熱
B.検査所見
炎症反応(CRP、ESR)陽性
C.遺伝子検査
TMEM173の機能獲得性変異
どのような治療が行われるの?
SAVIには現時点で確立された治療法はありません。厚生労働科学研究成果データベースでは治療薬として、ステロイド、免疫抑制剤、ヒドロキシクロロキン(免疫調節剤)、抗TNF-α阻害剤、抗IL-1阻害剤、抗IL-6阻害剤、抗CD20抗体、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase: JAK)阻害剤が示されています。SAVIはIFNが過剰に産生されて免疫反応を介して炎症性反応を生じる疾患です。ステロイド、免疫抑制剤、ヒドロキシクロロキンは炎症や免疫反応を抑制するものです。抗TNF-α阻害剤、抗IL-1阻害剤、抗IL-6阻害剤はいずれも炎症反応にかかわるサイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6)を抑制するものです。JAK阻害剤はIFNを含む多くのサイトカインを抑制する薬剤です。国内でSAVIに対する適応を持つ薬剤はありませんが、海外の報告ではJAK阻害剤はSAVIの症状を改善し、炎症を減少させ、IFNに関わる遺伝子の発現を減少させたことが報告されています。
どこで検査や治療が受けられるの?
日本でSAVIの診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。
※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。
患者会について
難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。