色素性乾皮症

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Xeroderma pigmentosum
別名 XP、デ・サンクティス-カッキオーネ症候群(神経症状の強いもの)
日本の患者数 300~600人(2.2万人に1人)と推定
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体劣性遺伝)
発症年齢 生まれつき(遅いタイプもある)
性別 男女とも
主な症状 病的な日焼け、若いうちから日に当たる部分に多発する皮膚がんなど
原因遺伝子 XPA遺伝子など8種類
治療 発症した悪性腫瘍に対する治療など、対症療法
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どのような病気?

色素性乾皮症は、光に当たる部分の皮膚が乾燥して「しみ」がたくさんでき、皮膚がんになる確率が通常の数千倍高くなる遺伝性疾患です。多くの患者さんで、日光に当たると非常に激しい日焼けの症状が現れ、それが引くのに1~2週間かかります。重症の場合には、赤ちゃんのうちに日光浴をしたら、数分で顔が赤く腫れてぱんぱんになり翌日には水ぶくれができる、白目は赤く充血する、といった、異常な日焼けでこの病気に気付く場合があります。

色素性乾皮症は、A~G群、およびV型の8つの病型に分けられ、症状の程度や現れ方は病型によって異なります。全病型に共通した症状は、日光に当たった部分に皮膚がんができることです。最初は、顔や手など、日光に繰り返し当たる部分の皮膚にしみが増え、皮膚の乾燥が見られます。この乾燥を放っておくと、10歳になるまでに多数の皮膚がんが出現してきます。V型やC 群の人では、日焼けの症状が強く出ないタイプの人も多く、こうした人では、皮膚がんは20代くらいから生じ始めます。

半数以上の患者さんで、原因不明の神経症状が現れますが、日本ではA群の患者さんで多く見られます。具体的には、首が座るのや、ひとり立ち、言葉の発達などが遅れる、3~5歳頃から難聴や転びやすいなどの症状が出始めます。7~8歳頃になると、いったん覚えた言葉が不明瞭になったり、体のバランスを保てなくなり歩行の際に転ぶことが多くなったりします。10歳を過ぎる頃には、神経、知能、身体の全ての面で症状が進みます。

色素性乾皮症の患者さんは、日本に300~600人いると推定されています。また、病気になる頻度は2.2万人に1人の割合だと考えられており、男女に差はありません。この病気は、全世界の人で見つかっていますが、日本は欧米に比べ頻度が高く、特にA群とV型が多いことがわかっています。日本の色素性乾皮症の約半数はA群、4分の1がV型と知られています。男女のどちらかに多いということはありません。

色素性乾皮症は、指定難病対象疾患(指定難病159)です。

何の遺伝子が原因となるの?

 

A~G群、およびV型の全てについて、原因遺伝子が見つかっています。全て、日光の紫外線によって細胞のDNAについた傷を修復する仕組みに関連した遺伝子で、そこに変異が生じたために、細胞のDNAが傷ついたままになってしまい、その結果、症状が現れます。

色素性乾皮症は、常染色体劣性遺伝形式で、親から子へ遺伝します。人間が2本1セットで持っている原因遺伝子のうち、両親がともに1本ずつ同じタイプの遺伝子変異を有していた場合、子どもは4分の1の確率で2本とも変異を有して色素性乾皮症になります。また、2分の1の確率で1本変異を有し発症はしない「保因者」となり、4分の1の確率で色素性乾皮症を発症せず保因者でもなく(変異した遺伝子を持たず)生まれます。

病型原因遺伝子染色体位置作られるタンパク質の機能光線過敏皮膚がん(基底細胞がん平均初発年齢)神経症状
A群XPA9q22.33DNA損傷の認識と、ヌクレオチド除去修復(NER)という修復に関与+++9.7++
B群ERCC32q14.3TFIIHと呼ばれる、遺伝子の転写とDNA損傷の修復に関わるタンパク質複合体を構成するサブユニット+++ ※-~++
C群XPC3p25.1DNA損傷の認識と、NERに関与++14.0
D群ERCC219q13.32TFIIHと呼ばれる、遺伝子の転写とDNA損傷の修復に関わるタンパク質複合体を構成するサブユニット++38.0-~++
E群DDB211p11.2紫外線による損傷を受けたDNAを修復するタンパク質複合体のサブユニットで、NERに関与+38.3
F群ERCC416p13.12DNA損傷を修復する際にはたらく、構造特異的DNA修復エンドヌクレアーゼ(5’切断)という酵素を構成するタンパク質+43.7-~+
G群ERCC513q33.1NERの際にはたらく、構造特異的DNA修復エンドヌクレアーゼ(3’切断)という酵素を構成するタンパク質+32+
V群POLH6p21.1紫外線による損傷を受けたDNAを複製する「DNAポリメラーゼeta(イータ)」という酵素+41.5

※B群は世界的にみても大変まれで、全世界で数例しか報告がなく、日本での報告例はありません。そのため、平均値を出せるほどの情報はありませんが、患者さんはいるので「+」としています。

 

常染色体劣性遺伝

どのように診断されるの?

皮膚科専門医による診察を受けて、色素性乾皮症の疑いがあった場合には、種々の検査を受けたうえで、確定診断がなされます。また、遺伝子診断で、色素性乾皮症のうちのどのタイプか、また、同じタイプのうちのどのような遺伝子異常かを突き止めます。

症状の診断基準は、「子どものうちから顔面や首、手など、日に当たる部分に限り、広範囲に30個以上のしみができている」「異常に激しい日焼けを起こす」「50歳前に日に当たる部分に皮膚がんが多発する」「原因不明の進行性脳・神経障害(難聴や歩行障害など)がある」で、これらの症状を全て認め、遺伝子検査で関連遺伝子に変異が認められた場合、色素性乾皮症と診断されます。または、症状のうちのいずれかが認められた場合も、患者さんから採取した細胞で検査した結果、色素性乾皮症と診断されることがあります。その他、「色素性乾皮症の疑い」と診断する基準も設けられています。

どのような治療が行われるの?

今のところ、色素性乾皮症を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。神経症状がどうして起きるのか、ひどい日焼けがどうして起きるのかも、まだ解明されていません。そのため、定期的に病院を受診して検査を受け、症状に対する治療を受けます。

早期にこの病気を発見して、遮光を確実に行うことで、皮膚がんの発症は、以前よりもかなり防げるようになってきています。一方で、病気の発見が遅れた場合などでは、それまでに当たった日光(紫外線)の影響で、次々と皮膚がんが生じてきます。できた皮膚がんは、大きくならないうちに、早めに切除します。歩行困難に対しては、整形外科で手術を受けたり、装具をつけて矯正したりする場合があります。食べ物や飲み物が正しく飲み込めない人は、胃ろうを作ることがあります。また、夜に無呼吸発作を起こす人は、命に関わるので気管切開をします。

治療では、皮膚科、小児科・神経内科、眼科、耳鼻科、整形外科、歯科、泌尿器科など多くの診療科の医師がチームを組んで、遮光指導、皮膚がんチェック、補聴器装用、リハビリ指導などにあたります。

現在、世界中で大勢の医学者や研究者が、色素性乾皮症の原因解明や治療薬開発のために、日々研究を進めています。まだ人間では試みられていませんが、細胞や動物の実験で、遺伝子治療の効果が得られたという報告も出てきています。

日常生活では、遮光の徹底が重要です。例えば、帽子をかぶり、SPF30以上の日焼け止めを、2時間おきに塗りなおすなどです。保育園や学校などで、窓ガラスなどに遮光フィルムを貼ってもらえるかは、自治体により対応が異なるため、入園や入学の2、3年前から役所に問い合わせてみるのが良いでしょう。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で色素性乾皮症の診断や治療を行っている、主な施設は以下です。

 

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参考サイト

参考文献:医学書院 医学大辞典 第2版