ヤング・シンプソン症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Young-Simpson syndrome
別名 Say-Barber-Biesecker-Young-Simpson症候群
日本の患者数 約100人
発症頻度 10万~20万出生に1人と推定されている
子どもに遺伝するか 家系の報告はほとんどないが、遺伝する(常染色体優性遺伝)
発症年齢 生まれつき
性別 男女とも
主な症状 特徴的な顔だち、骨格異常、精神遅滞、内分泌異常など
原因遺伝子 KAT6B遺伝子
治療 対症療法
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どのような病気?

ヤング・シンプソン症候群は、特徴的な顔だちをもつ先天性の病気のひとつで、さまざまな症状が現れます。

おなかの中にいるとき(胎生期)には、羊水過多が認められることがあります。国の調査によると、この病気の患者さんの約7割で認められたそうですが、その原因はまだ解明されておらず、出生後の症状に関連するかどうかも、今のところよくわかっていません。また、この病気が原因で、早産や低出生体重児となることはまれです。

出生後、新生児期には、呼吸障害が多くみられます。ほとんどは軽度で、人工呼吸管理を必要とするほど重症ではありません。また、ほぼ全員に、哺乳障害がみられます。ミルクを飲む力が弱い、鼻からよくミルクが出てくる、などの症状がある一方で、体幹のそり返りが強いため、直接授乳で母乳を与えるのが困難なケースもあります。そのため、経管栄養(管を通して消化管に直接栄養を注入する方法)を導入する場合も多くありますが、経過とともに徐々に口から栄養を摂取できるようになってきます。経管栄養の導入などもあり、生後の体重増加が著しく遅れることはありませんが、身長は標準的かやや低い傾向にあります。また、「眼瞼裂狭小(がんけんれつきょうしょう)」という、目がうまく開かない、開いても表情が乏しいといった症状も特徴として挙げられます。

また、弱視(めがねなどで矯正しても視力が出ない)、鼻涙管閉塞(目と鼻をつなぐ管が塞がって涙が止まらない)などの目の症状、難聴、内反足(足が内向きに大きく反っている)、甲状腺機能低下症などの内分泌異常、てんかん、外性器の異常、中等度から重度の精神遅滞などが特徴として挙げられます。外性器の異常については、ほとんど全員の男性で、両側の停留精巣(精巣が陰嚢に入っていない状態)がみられます。陰茎も小さい傾向にあります。こうした異常による比較的多い合併症として、膀胱尿管逆流症や後部尿道弁が挙げられます。精神遅滞については、言語表出よりも理解力の方がよい傾向にあります。乳児期には反応が乏しかったり、発達の遅れが目立ったりしていても、幼児期後期~学童期以降に人懐こい性格となり、社会性が育まれていくのも特徴です。

心血管系の異常がみられることもあり、国の調査では、半数近くで先天性心疾患(心房中隔欠損症や心室中隔欠損症など)を合併してしました。また、肺動脈(弁)狭窄症の合併が比較的多く認められます。その他、男性で第二次性徴の遅れが認められる場合もあるとされています。女性では目立った遅れはありませんが、月経不順は比較的多いとされています。乳児期には目立ちませんが、成人になると、手や足の指が目立って長い場合や、耳介前瘻孔(じかいぜんろうこう)という耳の形の異常、小顎などが認められる人もいます。

日本にヤング・シンプソン症候群の患者さんは、約100人いるとされています。また、発症頻度は10万から20万出生に1例と推定されていますが、正確な人数は把握されていません。長期的な生命予後は、これまでに患者さんの報告例が少ないためにはっきりしませんが、先天性心疾患やてんかん、新生児・乳児期の気道感染などの合併症の重症度によるとされています。

患者さんは、男女ともにみられますが、発症のしやすさや重症度に性差があるかどうかは、まだはっきりわかっていません。国の調査では、協力してくださった患者さんの8割以上が男性で、また、女性の方が軽症な傾向があったそうです。男性が目立つ理由の1つとして、外性器異常が男児で見つけやすいことが挙げられています。

ヤング・シンプソン症候群は、国の指定難病対象疾患(指定難病196)、および、小児慢性特定疾病の対象疾患です。

何の遺伝子が原因となるの?

ヤング・シンプソン症候群の原因遺伝子として、10番染色体10q22.2という位置に存在する「KAT6B遺伝子」が、これまでに見つかっています。KAT6B遺伝子は、「ヒストンアセチルトランスフェラーゼ」と呼ばれる酵素の設計図となる遺伝子です。この酵素は、体中のさまざまな遺伝子の制御(使われ方)に関連する現象である「ヒストン修飾」に関わる遺伝子です。KAT6B遺伝子の変異により、異常なヒストンアセチルトランスフェラーゼが作られ、ヒストン修飾が正しく行われなくなることが、この病気の原因と考えられています。しかし、たくさんの臓器にわたってさまざまな症状が現れるメカニズムは、まだほとんど解明されておらず、研究が進められています。

ヤング・シンプソン症候群の遺伝子変異は、大部分が両親では変異がなく、子どもで新たに発生するものです(新生変異)。したがって、この病気の「家系」がみられる例はほとんどありません。きょうだいでの発症例も、今のところ報告はありません。ヤング・シンプソン症候群の患者さんが子どもを持った場合には、常染色体優性遺伝形式で遺伝するため、親から子への遺伝は50%の確率であり得ます。

常染色体優性遺伝

KAT6B遺伝子に変異が見つからなくても、ヤング・シンプソン症候群と診断される患者さんもおり、それらの方は、今のところは原因不明ということになります。

どのように診断されるの?

ヤング・シンプソン症候群には、医師がヤング・シンプソン症候群と診断するための「診断基準」があります。したがって、病院へ行き、必要な問診や検査を受けた後、主治医の先生がそれらの結果を診断基準に照らし合わせ、結果的にヤング・シンプソン症候群かそうでないかの診断をすることになります。

遺伝子を調べ、KAT6B遺伝子に変異が見つかった場合、ヤング・シンプソン症候群と診断されます。

また、以下の主要な6症状のうち、1、2、3に加え4~6のうち1症状以上の、計4症状以上を満たした場合に、ヤング・シンプソン症候群と臨床診断されます。

  1. 眼瞼裂狭小と膨らんだ頬からなる特徴的な顔だち
  2. 精神発達の遅れ:中等度から重度
  3. 目の症状:眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞など
  4. 骨格異常:内反足など
  5. 内分泌学的異常:甲状腺機能低下症
  6. 外性器異常:主に男性で停留精巣および矮小陰茎

羊水過多、新生児期の哺乳不良、難聴、行動特性、泌尿器系異常などは、診断の補助となる症状として挙げられています。

どのような治療が行われるの?

今のところ、ヤング・シンプソン症候群を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。そのため、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心となります。例えば、内反足に対して固定や手術による治療が行われたり、心奇形に対して手術が行われたりします。目の見え方の異常に対してめがねを処方したり、甲状腺機能低下症に対しては甲状腺ホルモン投与、難聴に対しては補聴器が検討されたりします。

よりよい生活を送るために、生まれてすぐから生涯にわたって、定期的に診療を受け、適切な治療を受けます。乳幼児期には早期から療育に参加し、発達レベルや体力などを考慮した生活を送ることが望ましいとされています。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でヤング・シンプソン症候群の診断や治療を行っている、主な施設は以下です。

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参考サイト