【きほんの質問】ウイルスベクターで非分裂細胞に導入された正常遺伝子は、生涯発現が持続する?

遺伝性疾患プラス編集部

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「ウイルスベクターによる遺伝子治療で細胞内に導入された正常な遺伝子は、非分裂細胞(神経細胞や筋細胞など)では長期間、遺伝子発現が持続すると聞きました。この、"長期間"というのは、理論上では生涯持続すると考えてよいのでしょうか?」(雨さん)

理論上は、最終分化した細胞では長期にわたり持続するといえますが、実際どれくらいの期間持続するのかについては、まだわかっていません。使用したベクターによっても異なると思いますが、AAV(アデノ随伴ウイルス)の場合、神経細胞や筋細胞などでは少なくとも20年程度は持続するとされています。

ただ、これはあくまでも予想です。最終分化した細胞とはいえ、ウイルスベクターに感染するので、はしかが治ることと同じように、免疫によって遺伝子導入をした細胞ごと排除されてしまう可能性があります。

もう一つ、広く使用されているレンチウイルスベクターは、造血幹細胞(骨髄の中で白血球、赤血球、血小板を作るもとになっている細胞)をターゲットにしています。造血幹細胞は未分化のもののみを取り出すことは難しく、ある程度分化した(寿命がある)細胞にしか遺伝子が導入できていない可能性はあります。その場合は、永久に持続するとは言えないかもしれません。ただ、ADA欠損症の遺伝子治療では20年以上にわたり発現が確認されています。

まとめると、非分裂細胞に入った場合、10~20年は持続しそうですが、それ以降は免疫などで排除される可能性が否定できないので、一概に一生とは言えません。

※座談会の内容は、2021年2月(収録当時)の情報です。