【きほんの質問】臍帯血バンクや乳歯バンクは将来遺伝子治療に利用される?

遺伝性疾患プラス編集部

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「子どもが生まれた時、将来の疾患に備えて臍帯血を20年預かるサービスを利用しました。この臍帯血は遺伝子治療に利用される可能性がありますか?乳歯バンクも同様に、遺伝子治療に利用できるのでしょうか?」(Ribbonさん)

臍帯血バンクには公的なものと民間のものがあります。公的なものは、無償で提供され、白血病などで移植を必要とする患者さんのために使われます。民間の臍帯血バンク(臍帯血プライベートバンク)は、本人や家族の病気の治療に使うことができる可能性を想定して、保管費用を支払って、臍帯血を保管するものです。現在まだ、医療技術として確立されていない再生医療や移植が必要となった場合に、本人や家族に臍帯血が返還され、使用されます。

ご質問くださった方は、「20年預かるサービス」を利用しているので、臍帯血プライベートバンクを利用しているのだと思います。臍帯血プライベートバンクでは、臨床研究として預けた臍帯血を用いた治療が行われていますが、保険診療は行われていません。遺伝子治療に利用される可能性については、プライベートバンク事業会社にもよるので、ここでは臍帯血中の「幹細胞」が遺伝子治療に利用される可能性についてお答えします。

まず、幹細胞を用いた遺伝子治療は、既に行われています。たとえば、遺伝子異常で特定のタンパク質が作られないために発症する病気は、遺伝子治療の対象となります。患者さんの骨髄から幹細胞を取り出し、ウイルスベクターを用いて正常な遺伝子を細胞に導入し、その細胞を増やして再び患者さんの体に戻します。そうすると、体内で正常な遺伝子が働き、これまで作られなかったタンパク質が作られて病気を治すことができます。幹細胞を用いた遺伝子治療の開発が進んでいることを考えると、臍帯血も遺伝子治療に利用される可能性はあるかと思います。

最近は「歯の細胞バンク」といって、自身の歯を再生医療に使うために保管しておくバンクがあります。ご質問にあった「乳歯バンク」もこれに含まれると思いますが、これは歯の中の「歯髄(しずい)細胞」を再生医療に活用することを視野に入れています。

歯髄細胞にも幹細胞が含まれていることを考えると、将来、遺伝子治療に利用される可能性はあるかもしれません。

※座談会の内容は、2021年2月(収録当時)の情報です。