【自身の病気に関する質問】脊髄性筋萎縮症治療薬「スピンラザ」も遺伝子治療薬?側弯手術をしていても可能?

遺伝性疾患プラス編集部

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「脊髄性筋萎縮症で、脊髄に注射をして治療する「スピンラザ」という治療薬がありますが、これも遺伝子治療薬ですか?また、私は首の付け根から尾骨あたりまで金属のボルトを背骨に入れているのですが、側弯の手術をしていてもこの治療はできるのでしょうか?」(りんたさん)

脊髄性筋萎縮症の治療薬「スピンラザ」は、核酸医薬であり遺伝子治療薬の「ゾルゲンスマ」とは異なります。

核酸医薬とは、生物の遺伝情報を司る、DNAやRNAの構成成分であるヌクレオチドおよびその誘導体を基本骨格とする医薬品の総称です。遺伝子発現を介さずに、直接mRNAなどに作用して、タンパク質合成のさまざまな過程を変更・修正します。

脊髄性筋萎縮症はSMN1遺伝子の欠損または変異によって、機能するSMNタンパク質が十分に産生されないことによって起こります。SMN1遺伝子には、バックアップ遺伝子であるSMN2遺伝子が存在します。SMN1とSMN2は同じSMNタンパク質を合成する遺伝子です。SMN2遺伝子自体もSMN1と似ていますが、作られるSMNタンパク質は、ごく一部(10%)しか完全な機能をもっていません。その原因は、SMN2遺伝子のmRNA(メッセンジャーRNA)が出来る過程において、90%の確率で一部分の配列が抜けてしまい、機能のない不完全なタンパク質を合成しているためです。

スピンラザは、SMN2のmRNA前駆体を標的として、その成熟過程を変化させ、一部分の配列が抜けるのを減らすことで、正常なSMNタンパク質の産生を増加させます。

一方、ゾルゲンスマは遺伝子治療に当たります。AAVベクターでSMN1遺伝子を患者細胞に取り込ませ、正常なSMNタンパク質を作らせます。

スピンラザ治療は、側弯の手術後でも可能で、実際に多くの患者さんが受けています。

ただし、手技が難しいため、神経内科だけでなく麻酔科や整形外科が協力して行なっている場合が多いようです。そのため投与を行っている施設の中でも、さらに限られた施設のみで対応していると思います。

※座談会の内容は、2021年2月(収録当時)の情報です。