「25歳の息子が遺伝子診断でハンチントン病と判定されました。父親と祖父、叔母が同じハンチントン病です。若いので進行も早いのではと不安で、早い治療を望んでいます。ハンチントン病に対する遺伝子治療の開発はどこまで進んでいるのでしょうか?」(akoさん)
ハンチントン病は、ハンチンチン遺伝子の「CAGリピート」が異常に伸び、そこから作られた変異型ハンチンチンタンパク質がさまざまな症状をもたらします。これまでは、「対症療法」といって、病気の原因ではなく1つひとつの症状を軽減するための治療が行われるのみでした。
しかし、最近では核酸医薬や遺伝子治療薬の開発が進んでいます。まず2020年2月に「RG6042」という薬が、ハンチントン病を予定適応症として厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けました。この薬は、変異型ハンチンチンタンパク質の産生を抑えるように設計されており、現在、第3相国際共同治験を実施中です※。
※動画撮影後の2021年3月22日に Roche社 は第3相国際共同治験を中止したことを発表しました。
治験は何段階かにわたって実施されますが、第3相は、より多くの患者を対象に多施設共同で実施されています。この薬は、ハンチントン病の進行を遅らせる/進行を抑える効果が期待されています。希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、医薬品医療機器等法に基づき厚生労働大臣から指定を受け、優先的に審査される医薬品で、RG6042はその指定を受けています。RG6042 は核酸医薬で、タンパク質の合成をターゲットにしていますが、ハンチントン病については遺伝子治療につながる開発も進んでいます。
たとえば、大阪大学の研究グループは2020年2月にハンチントン病の治療につながる低分子化合物を開発したことを発表しました。開発された分子がDNAにくっつくと、もともと備わっているDNAの修復機構が働いて、長くなった部分を切って短くし、異常なタンパク質の凝集を抑制することがわかりました。この研究成果により、ハンチントン病の原因となる、伸びたCAGリピートを短くし、正常化する遺伝子治療への道がひらけたと、研究グループは発表しています。
また、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療についても、治験が進行しており、有害なハンチンチンタンパク質の生成減少と、長期間の効果持続が期待されています。
このようにハンチントン病をめぐる遺伝子治療は、国内外において開発が進んでいます。
ご相談くださった方は息子さんがハンチントン病と遺伝子診断されていて、症状が出ているとのことでした。息子さんには主治医がいらっしゃる状況かと推察します。最新の治療や治験などの情報は、かかりつけの主治医に相談してみるとよいと思います。
息子さんご自身はもちろんですが、相談くださった方もさまざまなお気持ちの中でお過ごしのことと思います。すでに活用されているかもしれませんが、日本ハンチントン病ネットワークなどの団体のホームページから、今後のヒントになる情報も得られるかもしれません。
※座談会の内容は、2021年2月(収録当時)の情報です。