【自身の病気に関する質問】低ホスファターゼ症の遺伝子治療は何年後に実現?それまでに超えるべきハードルは?

遺伝性疾患プラス編集部

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「低ホスファターゼ症の根治治療となる遺伝子治療に大きな期待を持っています。酵素補充療法のために、生涯にわたって続ける必要がある注射は、負担も大きいです。低ホスファターゼ症に限っていえば、何年後に実現されそうでしょうか?また、実現するために、越えるべきハードルとしてどういったことがあるのでしょうか?」(匿名希望)

低ホスファターゼ症は、アルカリホスファターゼという酵素の遺伝子に変異を持った先天性骨系統疾患の1つで、骨の石灰化が阻害され、骨折しやすくなり、乳歯が早く抜ける症状もあるようです。

さらに、けいれんなどの中枢神経症状もあり、発達が遅れるようです。この疾患に対する遺伝子治療について、動物実験は何年も前から日本でも実施されています。AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを注射する方法が主流だと思います。しかし、臨床応用に近い段階まで来ているという状況ではなさそうです。

酵素補充療法が存在するということも、遺伝子治療法の開発に時間がかかる理由になっていると思います。何も治療法がなければ、遺伝子治療の開発を急ぐ必要がありますが、既存の治療法がある場合は、それとの比較が要求されますので、ハードルが高くなります。

しかし、酵素補充療法は、酵素に対する抗体ができて効果が減弱していくこと、中枢神経症状は改善しないことなどの問題から、やはり遺伝子治療法の開発は必要だと思います。

一方で、細胞療法の開発が進んでいます。骨髄移植後に他家骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を投与する臨床研究が2例の患者さんで行われ、不完全ながら全身の骨再生が確認されたと報告されています。

その後、高度に純化された骨髄由来MSC、すなわち「REC」と呼ばれる細胞が島根大学発のベンチャー企業で開発されており、臍帯血移植後にRECを投与する医師主導治験が計画されているようです。

2025年には承認を目指すとされていますが、計画通りに進むかはわかりません。その他、このような細胞治療の有効性を高めるための、さらなる構想も世の中にはあるようです。

※座談会の内容は、2021年2月(収録当時)の情報です。