マイナンバーカードを医療費助成の受給者証として利用、2024年春から一部の自治体でスタート

遺伝性疾患プラス編集部

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以前実施した医療費や利用している制度に関するアンケートで、「マイナンバーカードの活用することで手続きが楽にならないのか」といった声がとても多く寄せられました。そこで、厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課 課長補佐の横田正明さんにお伺いし、今まさに整備が進んでいるマイナンバーカードの活用事業、2024年3月からスタートする先行事業について、詳しく解説していただきました。

「マイナンバー制度」とは

マイナンバーは、住民票を有する全ての方が持つ1人にひとつの12桁の番号で、行政手続等における特定の個人を識別するための制度。社会保障制度、税制、災害対策など、法令または条例で定められた事務手続において使用される。それぞれの行政機関等が専用のネットワークシステムを用いて情報連携することで、各種の行政手続における添付書類の省略などが可能となる。また、マイナンバーカードは、民間サービスでの本人確認等にも利用できる。

難病患者さんの医療費助成において、どのような課題がありますか?

患者さんやご家族、医療機関、地方自治体のそれぞれにおいて、いろいろな悩みがあると伺っており、よくお聞きすることとしては、例えば、以下のようなものがあります。

〈患者さんやご家族〉

  • 医療機関を受診する際に、健康保険証(マイナンバーカード)とは別に、紙の受給者証を提示して医療費助成の資格を示す必要があること
  • 医療費助成の申請手続きのたびに、さまざまな所に分散している情報を集める必要があることや、場合によっては、紙で情報を収集する必要があること

〈医療機関〉

  • オンライン資格確認とは別に、医療費助成の資格を個別に確認するのに時間や労力がかかること
  • 資格情報を手入力でレセプトコンピューター(レセコン、診療報酬明細書を作成するシステム)へ登録が必要であること
  • 制度の助成ルール把握のために時間や労力がかかること

<地方自治体>

  • 申請・更新、転入・転出の事務にかかる業務や、助成にかかる請求事務などにコストがかかること
現状で、マイナンバーの提出により、医療費助成の新規申請や更新の手続きにおいて省略可能となる書類はありますか?

Gene Mynumber 1

難病関係としては、例えば、下記などの書類が情報連携により省略可能となっています。

  • 住民票の写し
  • 課税証明書
  • 健康保険証
  • 生活保護受給証明書
  • 年金額等を示す書類

しかしながら、地方自治体の状況によっては、対応しているものとそうでないものがあります。

マイナンバーカードを活用した負担軽減に向けた取り組みは進んでいますか
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出典:デジタル庁 医療費助成の受給者証や診察券のマイナンバーカード利用の推進について(医療機関・薬局システムベンダー向け説明会資料 2024年2月9日)

 

先ほど挙げたような課題をデジタル化により解決するため、「Public Medical Hub」(パブリック・メディカル・ハブ、以下PMH)というシステムを構築する事業が進んでいます。簡単に説明すると、難病や子どもの医療費助成、予防接種、母子保健(健診)などを受診する際に、マイナンバーカードを利用した情報連携をできるようにするためのシステムです。

このシステムが運用されるようになると、「健康保険証」と「紙の受給者証」の両方を医療機関に持参する必要はなくなり、マイナンバーカード1枚で受診できるようになります。紙の受給者証の持参の手間が軽減し、紛失リスクや持参忘れ、再来院を防止できます。

先行して一部の地方自治体、医療機関へのシステム導入をすでに進めています。難病の医療費助成に関しては、愛知県一宮市の医療機関等で小児慢性特定疾病を対象に先行事業がスタートする予定です。

今回の先行事業においては、スムーズに手続きが行えるか、更新された資格情報を得られるか、制度が改訂された際に正しく反映されるか、などを検証する予定です。今後、地方自治体や医療機関を拡大するとともに、システム改修や通信環境の整備などを行っていき、2026年度以降の全国展開を目指しています。

また、このPMHの取り組みのほかに、医療費助成の申請手続きのオンライン化についても検討を進めています。

「自己負担上限額管理票」も持参しなくてはなりませんが、このデジタル化は進められていますか?

はい、こちらについては、医療DXの取り組みの一つとして、「共通算定モジュール」という、診療報酬算定や患者さんの窓口負担金計算を行うプログラムの開発を進めています。

2024年度は共通算定モジュールの開発を進め、2025年度にモデル事業を実施し、2026年度には本格的にモジュールを提供できるように準備を進めているところです。導入効果が高いと考えられる中小規模の病院を対象に提供を開始して徐々に拡大するとともに、医療機関等の新設のタイミングや、システム更改時期に合わせて導入を促進していく予定です。

先ほどお話ししたPMHやこの共通算定モジュールが全ての病院や診療所、薬局等に普及すれば、医療機関等をまたいだ高額療養費も計算できる(償還払い不要)ほか、公費負担医療の紙の上限額管理票を電子化することができます。

マイナンバーカードと健康保険証の一体化が重要になってきますね。

マイナンバー制度はデジタル社会の基盤として、国民の利便性向上と行政の効率化をあわせて進めることができるものです。患者さんやご家族の負担軽減を進めるとともに、医療現場の業務効率化や、より効率的で効果的なサービスを行っていくためにも、医療DXの業務にしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

参考リンク

<厚生労働省>

<デジタル庁>

<マイナポータル>


答えてくれた方

厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課 課長補佐 横田正明さん


政府は2024年3月5日、マイナンバー法などの改正案を閣議決定しました。個人番号などをスマートフォンに搭載可能にし、マイナンバーカードを持ち歩かなくてもスマホのみで本人確認が行えるようにするものです。今国会で成立させ、2025年夏以降の運用開始を目指しているとのこと。これが実現すると、保険証+受給者証+上限額管理票がスマホ1台 ですむ、という日もそう遠くないのかもしれません。(遺伝性疾患プラス編集部)