ヨウ素の輸送・貯蔵に関わる働きをするヨードトランスポーター
杏林大学は、先天性甲状腺機能低下症の新たな原因遺伝子として、「SLC26A7」を発見しました。
先天性甲状腺機能低下症は、胎児期または周産期に生じた何らかの病因により、甲状腺ホルモン産生不足または作用不全をきたす疾患の総称。甲状腺ホルモンを合成するためには、ヨウ素が必要不可欠です。ヨウ素は、食事から摂取してそのほとんどが甲状腺に貯蔵されますが、ヨウ素の輸送・貯蔵に関わる働きをする物質を「ヨードトランスポーター」と呼びます。
これまでに、ヨードトランスポーターとして、「SLC5A5」と「SLC26A4」(ペンドリン)という2つの遺伝子が知られていました。SLC26A4は、甲状腺腫大と難聴を伴うペンドレッド症候群の原因遺伝子ですが、この症候群の半数以上で甲状腺機能は正常なため、SLC26A4とは別のヨードトランスポーターが存在することが示唆されてきました。
甲状腺でSLC26A4のヨウ素輸送機能をSLC26A7が代償
研究グループは、先天性甲状腺機能低下症患者さんの兄妹とその家族の遺伝子解析を行い、同病の患者さんにおいて、「SLC26A7」遺伝子の機能が失われる変異があることを発見しました。この遺伝子の甲状腺での発現やその機能、病気との関連性は全く知られていなかったため、次に研究グループは、SLC26A7がSLC26A4と同様の働きをしていると仮説を立て、実験を進めました。その結果、SLC26A7が甲状腺でSLC26A4の機能を代償する重要な遺伝子であると判明しました。
研究グループは、「今回の研究でヨウ素輸送に関わる新たな分子が解明されたことで、今後、同じような特徴を持つ先天性甲状腺機能低下症患者や、頻度の高い甲状腺腫大のより詳細な病態解明に結びつくとともに、病気の原因に対して特異的な治療の開発が期待される」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)