パーキンソン病に対する新たな治療の開発へ、患者の脳内解析から因子を特定

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. パーキンソン病患者さんの脳内を、特殊な技術を用いて直接的に解析
  2. レビー小体が「アミロイド線維」というタンパク質を含有していることが判明
  3. アミロイド線維の凝集抑制治療が、パーキンソン病においても応用できる可能性を示唆

パーキンソン病患者の脳内で、レビー小体が「アミロイド繊維」を含有と確認

大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、パーキンソン病患者さんの脳内に実在するレビー小体を解析し、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて証明しました。公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)の研究グループと大型放射光施設SPring-8で行った共同研究です。

パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで多い進行性の神経変性疾患。同病の患者さんに見られる特徴的なタンパク質凝集体「レビー小体」は、病状の進行とともに増殖することが示唆されています。進行を抑制する根本的な治療は存在しません。これまでの動物実験で、レビー小体の主成分とされる「α-シヌクレイン」から、人工的に作製された「アミロイド線維」の断片が脳内に広まることは確認されていましたが、実際の患者さんでどうなっているかを確認することは技術的に難しいとされていました。

そこで、同研究グループはSPring-8(兵庫県にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設)の「BL40XU」を用いた、マイクロビームX線回折という手法で、パーキンソン病患者さんの脳切片に実在するレビー小体の微細構造を直接的に解析して、レビー小体がアミロイド線維を含有しているかを調べました。その結果、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて確認しました。

凝集抑制治療のパーキンソン病への応用の可能性

この成果は、パーキンソン病が、難病「アミロイドーシス」の一種であるという、新たな疾患概念を提唱するための重要な根拠となると考えられます。この難病は、全身にアミロイド線維が沈着することで発症するアミロイドーシスという疾患で、パーキンソン病と同様に進行性の難病とされてきました。遺伝による発症もあります。

一部のアミロイドーシスでは、アミロイド線維の凝集を抑制することにより症状の進行を抑制するという治療(凝集抑制治療)が最近日本でも保険適用となり、治療が行われています。今回の研究成果は、この治療がパーキンソン病においても応用できる可能性を示した重要な成果となりえます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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