出生前診断の普及によって均衡が保たれている?
国立成育医療研究センターは、日本におけるダウン症候群(21トリソミー)の年間出生数の推定値を報告しました。日本ではダウン症候群の出生数は公的な登録システムがなく、実際の出生数の動向は不明です。
今回発表された推定出生数は、日本における母親の出産時年齢別出生数の統計、母親の年齢・個別のダウン症候群出生割合、出生前診断(確定検査)数、人口妊娠中断率をもとに、年間のダウン症候群出生数を推定したものです。
「日本のダウン症候群出生数の推移」
2010年 2,199人
2011年 2,197人
2012年 2,201人
2013年 2,265人
2014年 2,231人
2015年 2,246人
2016年 2,208人
ダウン症候群児の出生率は、妊婦の高年齢化に伴い増加することが知られています。2008年に故梶井正山口大学名誉教授が、日本は高年妊娠が増加しており、将来はダウン症候群児数が激増すると予測を発表しました。しかし、今回の調査で、7年間(2010~2016年)のダウン症候群の出生数は年間2,200人前後でほぼ横ばいで、急速な妊婦の高年齢化の下、出生前診断の普及などによって均衡が保たれていると推察されました。
ダウン症候群など妊婦の高年齢化に関連する一部疾患を対象とした母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の母体血胎児染色体検査(NIPT)を始めとする出生前診断の実施には賛否両論あるものの、晩婚・晩妊娠化に伴う妊婦や家族の不安などを背景に、そのニーズは広がりつつあります。
「現在の出生前検査を取り巻く日本の状況を把握し、今後を予測して備えることは、女性の性と生殖に関する健康と権利を含めた医療・社会福祉制度を考えるにあたり、非常に重要なことと考えます」と、同センターは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)