思春期特発性側弯症、発症に関わる遺伝子座を新たに14か所同定

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 思春期特発性側弯症(AIS)発症に関わる14の遺伝子座(領域)を発見
  2. 女性のAIS発症には3つの遺伝子領域が関わっていると特定
  3. 心血管系、骨格筋、結合組織および骨、中枢神経系など6つの組織・細胞種が発症に関与

脊椎が曲がり容姿に変形、精神的にも悪影響をもたらす病気

理化学研究所は、日本人集団の遺伝情報を用いた大規模なゲノム解析を行い、思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis、以下AIS)の発症に関わる疾患感受性領域(遺伝子座)を新たに14か所同定しました。今回行ったゲノム解析は、「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」と呼ばれる解析です。

AISは、遺伝的因子と環境因子の相互作用により発症する多因子遺伝病。10歳以上の主に女児が発症し、日本人の有病率は2~3%といわれています。脊椎が三次元的にねじれて体幹に変形をきたし、変形が進行すると腰痛や背部痛、呼吸障害を起こします。また、容姿の変形から精神面にも悪影響を及ぼします。重度の側弯症に対する治療は、今のところ侵襲が大きく脊椎の可動性も制限される脊椎矯正固定術しかなく、AISの原因、病態を解明し、予防・治療法を確立することが求められています。

日本人約8万人の遺伝子を解析、女性のAIS発症に関わる3つの遺伝子座を特定

研究グループは、日本人集団(AIS患者5,327人、非患者7万3,884人)を対象に、AISの大規模ゲノム解析(GWASのメタ解析)を実施。その結果、AIS発症に関わる新しい遺伝子座を14か所特定しました。また、女性AIS患者のみを対象とした層別化解析により、女性のAIS発症に関わる遺伝子座を3か所特定しました。遺伝統計学的手法を用いた解析からは、肥満の指標とされるBMIや尿酸値と共通の遺伝的要因を持つことが明らかになりました。さらに、心血管系、骨格筋、結合組織および骨、中枢神経系など6つの組織・細胞種が発症に関与していることもわかりました。

今回の研究で見つかった遺伝子座に存在する原因遺伝子を特定して、AISの原因を解明し、発症や症状の進行を予測することが可能になれば、個々に対応した治療方法を確立することができると考えられます。研究グループは、「海外のAIS研究グループと協力し、国際共同研究としてゲノム解析を行い、さらなる遺伝子座位の同定、原因遺伝子の発見を目指したい」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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