血中の免疫に関わる成分「IgG4」を詳しく調査
京都大学は、国際診断基準を満たす患者さん857例のDNAを用いて全ゲノム関連解析を行い、2つの遺伝子「HLA- DRB1」と「FCGR2B」が、指定難病「IgG4関連疾患(IgG4-RD)」と有意に関連することを見出しました。
IgG4-RDは、患者さんにより異なる臓器に症状が現れるため、自己免疫性膵炎、ミクリッツ病など、異なる20以上の病気として報告されてきました。自己免疫性膵炎で、血中のIgG4(血液中の「免疫グロブリン」(Ig)という成分の中の、IgG4という物質)が上がるという日本からの報告をきっかけに、疾患の統合・再分類が進み、2011年に国際的に承認され、日本では2015年度に難病指定されました。
IgG4-RDの治療は、多くの場合ステロイドが有効とされますが、各臓器疾患からなる全身疾患であり多彩な病変を認めるため、治療適応や治療法は異なります。そのため、今後さらなる研究が必要な疾患とされています。
患者さん857人のDNAから特定、IgG4-RDの高リスク群の予測に期待
今回の研究ではまず、日本全国のIgG4-RD専門医の属する50の研究・医療機関からなる多施設共同研究を組織し、IgG4関連疾患患者さんの臨床情報を集積したデータベースを構築。加えて、国際診断基準を満たす患者さん857例のDNA検体を収集しました。対照群としては、京都大学と滋賀県長浜市が共同で行った「ながはまコホート」参加の地域住民2,082人のDNA検体を用いました。
今回見つかった染色体1番の「FCGR2B」遺伝子は、難病指定の全身性エリテマトーデスと関連する遺伝子として知られています。さらに今回の研究から、FCGR2B遺伝子の変異は、炎症で腫れの出る臓器の数や、診断時の血中IgG4濃度と関連することも示されました。研究成果は、IgG4-RDの高リスク群の予測、診断や治療法や薬の開発に大いに役立つことが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)