疑似的に全ゲノム解析が可能な遺伝子検査ツール
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、健康診断での利用や医療への応用を想定した、疾患関連の遺伝情報検査ツール「ジャポニカアレイ(R)NEO」を開発しました。
日本人ゲノムで多型(人によって、染色体上の同じ位置の1塩基が違うこと)が報告されている疾患関連SNP(スニップ)約2.8万個、日本人約3,500人の全ゲノムシーケンスデータを基に設計されたタグSNP約65万個を搭載しています。
通常、人間の全てのゲノム情報を解析するには、「シーケンス」と呼ばれる方法で全ゲノム配列を解読します。これは多くの時間と費用がかかるものが主流です。今回開発されたツールでは、ヒトの遺伝子にあるSNP65万個の検査によって、全てのゲノム解析を行うのと同程度のデータを取得できるところが特徴です。
精神神経系疾患やがん、遺伝性疾患まで幅広い疾患の遺伝子検査に対応
このツールは、日本人の幅広い疾患を対象として設計されています。具体的には、認知症、抑うつや、自閉スペクトラム症などを含む精神神経系疾患(約5,500個)、高血圧、心疾患や、脳血管疾患などの循環器疾患(約1,100個)、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器系疾患(約2,000個)、糖尿病や脂質異常症等の代謝系疾患(約2,900個)、悪性新生物(約900個)、遺伝性疾患(約900個)など。免疫制御に関わるHLA(ヒト白血球抗原)およびKIR(キラー免疫グロブリン受容体)、また、ファーマコゲノミクス(個人にあった治療薬とその量を選択する)に関するSNPも搭載しています。
このツールが普及すると、より広いゲノム領域と疾患との関連性などが明らかになる可能性があります。また、大勢の人数のゲノム解析が低コストで実施可能となるため、これまでゲノム解析の対象ではなかった健康診断などの新たな領域への拡大も期待されます。
なお、このツールは、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループより、病院や研究機関、遺伝子解析受託サービス企業向けに販売されています。(遺伝性疾患プラス編集部)