進行を遅らせるステロイド剤以外に有効な薬がない
国立精神・神経医療研究センターは、日本新薬株式会社(以下、日本新薬)と共同で開発したデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の治療薬「ビルトラルセン」(販売名:ビルテプソ(R)点滴静注、開発記号NS-065/NCNP-01)について、厚生労働省から製造販売承認されたと発表しました。
DMDは、「ジストロフィン」と呼ばれる筋肉の骨組みを作るタンパク質の遺伝子の変異により、正常なジストロフィンが作られなくなることで、重篤な筋力低下を示します。この遺伝子はX染色体にのみ存在するため、男児で発症することがほとんど。病気の進行を遅らせるステロイド剤以外に、脊椎変形に対する手術治療、理学療法、呼吸補助や心不全対策などの対症療法のみで、有力な治療法は存在しないのが現状です。
正常よりもやや短いジストロフィンの発現を誘導、筋機能の改善に期待
ビルトラルセンは、同センターの医師主導および企業での臨床試験において患者さんへ投与され、安全性に大きな問題がなく治療効果が期待できることが示唆されたことを受け今回承認されました。同薬剤は、エクソン・スキップ作用を有する医薬品。投薬により、正常よりもやや短いジストロフィンの発現を誘導することができ、筋機能の改善が期待されます。ただし、この治療は「エクソン53スキップに応答する遺伝子に変異のある患者さん」のみに適応されます。
ビルトラルセンの開発は、世界に先駆けて日本で進められており、厚生労働省の先駆け審査指定制度および「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」を対象とした希少疾病用医薬品の指定を受けています。今回の承認は、条件付き早期承認制度の適用を受けたものであり、今後、製造販売後に、日本新薬が実施するDMD患者さんを対象にした第3相試験や製造販売後調査により、さらなる有効性および安全性の検証を行っていくことになります。(遺伝性疾患プラス編集部)