先天性の全前脳胞症、発症に関わる遺伝子をコントロールする仕組みを発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 先天性の全前脳胞症を引き起こす遺伝子「SHH」の働きを制御する仕組みを解明
  2. SHHは脳の前脳形成初期に重要で、この遺伝子の制御エラーが発症に関与
  3. 脳の発生メカニズムの解明や、類似疾患の遺伝要因の解明につながる可能性

脳の発生過程で重要な遺伝子「SHH」の異常が、全前脳胞症発症に関連

国立遺伝学研究所は、脳の形成に重要な、SHH(ソニックヘッジホック)という遺伝子の働きを制御する仕組みを発見しました。

人間の脳は、DNA配列に書き込まれた設計図をもとに作られます。その設計図は、どの遺伝子が「どのような細胞で働き」「どれくらいの量のタンパク質を生産するか」を正確に指示しています。設計図が壊れて、胎児期の脳を形成する重要な時期に、遺伝子の制御にエラーが起こると、重篤な先天異常につながります。

脳の形成には、SHH遺伝子が重要であることが知られています。また、脳の部分のうち、前脳は、脊椎動物の発生過程で生じる脳領域の最も前側にあり、最終的には、大脳・嗅球(嗅覚情報処理に関わる脊椎動物の脳の組織)・視床下部(内分泌や自律機能の調節を行う大事な部分)などを構成します。

全前脳胞症は、胎児期に前脳が正常に形成されないために起こる先天異常で、眼間狭小、鼻中隔欠損、口唇・口蓋裂など顔つきの形成障害や、大脳不分離などの脳障害を特徴としています。発症の原因は多岐にわたり、いくつかの遺伝子の関与が知られています。中でもSHH遺伝子は、疾患発症との強い相関が認められています。

SHH遺伝子の発現を調整するエンハンサー「SBE7」を発見、発症メカニズム解明へ

今回発見されたのは、そのSHH遺伝子の使われ方(発現)を調整する「エンハンサー」と呼ばれるDNA配列です。SHH遺伝子のエンハンサーはすでに6つあることが先行研究から明らかになっており、今回発見されたものは7番目にあたります。この7番目のエンハンサーは「SBE7」と呼ばれ、脳の形成初期に重要な役割を担っていることが明らかになりました。

脳形成の起点となるこのエンハンサーの発見は、脳の発生メカニズムや全前脳胞症の発症メカニズムの解明に大きく貢献することが期待されます。将来的に、SBE7と関わりのある他の分子が明らかになれば、全前脳胞症や類縁疾患の未知の遺伝要因の解明が一層進むことが望まれます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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