多くのPHA患者さんで、BMPの働きに関係した遺伝子に異常
東京大学は、BMPという、骨の形成に重要なタンパク質の解析から、肺動脈性肺高血圧症(以下、PAH)の病態に関わる遺伝子として「ATOH8」を新たに発見したと発表しました。
指定難病でもあるPAHは、さまざまな原因により心臓から肺に血液を送るための血管(肺動脈)の細い部分(肺細動脈)が異常に狭くなり、肺動脈の血圧が上昇して右心不全が生じる病気。原因解明と有効な治療法の研究開発が急務とされています。
PAH患者さんには、BMPの働きに関係した「BMPR2」という遺伝子の異常が見られ、また、BMPR2以外にも、BMPの働きに関係した遺伝子の異常が見つかることが多く、肺高血圧症の発症・進展にBMPが重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、BMPR2遺伝子が異常な場合でも、肺高血圧症を発症する確率は10~20%。BMPがどのように病気の発症・進展に関与するかは、まだ十分に解明されていません。
病態の発症・進展に関わる遺伝子「ATOH8」を特定
研究グループは、今回、遺伝子解析により、BMPに関係するPAHの新たな疾患関連遺伝子候補を探索。これまでの研究によって見出した、心臓や血管の機能に関係した各種データベースと合わせて再度解析を行い、「ATOH8」という遺伝子が候補に挙がりました。そこで、動物モデルや患者さん由来サンプルでこの「ATOH8」を詳しく調べたところ、この遺伝子が肺高血圧症の発症・進展に関わっているようだとわかりました。また、患者さんの組織では、この遺伝子の発現が低下していることが示されました。
現状、肺の血管を広げて血液の流れを改善させる新たな治療法の開発により、PAH患者さんの予後は改善していますが、BMPの機能異常との関係に踏み込んだ治療法は開発途上です。研究グループは、「この研究がきっかけとなり、PAH発症・進展におけるBMPの役割の解明がさらに進み、将来的な新規治療法の開発に大きく貢献することが期待される」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)