タンパク質の品質管理に関わる「NGLY1」の欠損が原因で発症
理化学研究所は、「NGLY1欠損症」の病態解明や治療法開発に有用な動物モデルの開発に成功したことを発表しました。
「NGLY1欠損症」は、2012年に発見された世界で患者数が50人程の病気で、治療法は見つかっていません。成長の遅れ、発育不全、運動障害、手足の筋力低下、てんかん、涙が出にくいなど、全身的に重篤な症状を示します。ヒトの細胞質には、タンパク質の品質管理に関与する「NGLY1タンパク質」と呼ばれる酵素が広く存在しており、この病気は「NGLY1タンパク質」の遺伝子変異が原因で引き起こされるといわれています。
これまでに、同研究所のグループによってNgly1遺伝子がないマウスの作成が試みられていましたが、生まれてくるまでの過程で何らかの異常が生じ、生きて誕生できませんでした(胚性致死と言います)。ほかの手法においても致死率が高く、病態の一部を再現できるモデルマウスを安定して作製する手法の確立が望まれていました。
マウスの成長とともに肝臓において病態発現
NGLY1欠損症の新生児に肝機能障害がしばしば見られることから、同研究所を含む国際共同研究グループは、全身ではなく肝臓だけでNgly1遺伝子を欠損するマウスを作製。驚いたことにマウスは外見上正常に育ちましたが、年を取る(約6か月後)に従って肝細胞の核のサイズと形状に異常が見られました。また、高フルクトース(糖の一種)餌や高脂肪餌など、食事のストレスを与えると脂肪肝を発症しました。
これらの結果から、今回開発したマウスは、これら肝臓における病態発現のメカニズム解析に有用であることが示されました。そして、モデル動物としてNGLY1欠損症の遺伝子治療をはじめとした治療法の検討が可能になりました。(遺伝性疾患プラス編集部)