特発性基底核石灰化症患者さんの遺伝子研究から、新たな治療確立への手掛かり発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 特発性基底核石灰化症は脳内の一部が石灰化し精神症状を有するが、無症状の人もいる
  2. 原因遺伝子のひとつ「SLC20A2」を解析し、機能の低下を確認
  3. この遺伝子の機能を部分的に改善することが発症予防につながる可能性

日本のIBGC患者さんは約300症例、まだ根本的な治療薬はない

岐阜薬科大学薬物治療学を中心とする研究グループは、神経変性疾患である「特発性基底核石灰化症」(idiopathic basal ganglia calcification:以下、IBGC)の患者さんの血液を用いた研究から、新たな治療開発につながる発見をしました。

IBGCは、脳内の大脳基底核、小脳歯状核などに原因不明の石灰化(カルシウム沈着)がみられる神経難病。パーキンソン病様症状、小脳症状、精神症状、認知症といったさまざまな症状が現れますが、無症状の人もいます。日本では約300症例が登録されており、詳しい家系調査はされていませんが、多くは孤発例です。

2012年に中国の研究グループが、家族性IBGCでは「SLC20A2」という遺伝子の変異が原因のひとつであると報告。その後、原因となる複数の遺伝子変異が報告されています。SLC20A2遺伝子の変異は、家族性IBGC患者さんの約半数(40~50%)を占め、最も頻度が高いとされます。この病気の根本的な治療薬はまだ見つかっていません。

SLC20A2遺伝子変異によるタンパク質機能低下、機能改善で発症予防の可能性

研究グループははじめに、IBGC患者さんとその家族の血液から遺伝子を抽出し、SLC20A2遺伝子において4つの変異を新たに特定しました。また、これらの変異が与える影響を解析したところ、4つとも、タンパク質の機能に障害を及ぼす可能性が示されました。

続いて、詳しい検証を行い、SLC20A2遺伝子変異の4つのうちの1つだけに変異があっても、IBGCの脳内石灰化や症状を全く呈していないことを見出しました。さらに、この変異によって生じるタンパク質の機能の低下を部分的にでも改善させることで、IBGCの発症予防や進展抑制ができる可能性があることもわかりました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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