小児期発症の同疾患に有効な造血幹細胞移植が、成人期発症にも有効かを検証
東京大学医学部附属病院は、成人期に発症した大脳型副腎白質ジストロフィーの治療法について、造血幹細胞移植が有効であることを明らかにしました。
この病気の国内患者数は推定400人程度で、病状の分類は多彩です。また、子どもでよくみられる病気で、小児期の大脳型に対しては発症早期の造血幹細胞移植が有効であることが確立されており、早期に診断および治療することが重要と考えられています。成人の大脳型については造血幹細胞移植の報告例が少なく、その治療効果はさまざまなため、有効な治療効果の確立には至っていませんでした。
そこで同病院では、成人大脳型副腎白質ジストロフィーの患者さん12症例(成人期発症10例、思春期発症2例)に対して造血幹細胞移植を行いました。用いた造血幹細胞は、血縁者または日本骨髄バンクのドナーの骨髄から得られたものです。
移植の有無で生存率に有意差、重篤な感染症や合併症は確認されず
造血幹細胞移植を行った患者さん全員で生着が確認され、全員生存しています(2020年1月14日時点)。またその治療効果について、造血幹細胞移植を行った患者さんと、行えなかった患者さん(8症例)を比較したところ、造血幹細胞移植を行った症例で有意に生存率が高いという結果が得られました。
また、12症例のうち9症例では造血幹細胞移植後2か月以内に脳病変の拡大停止を認め、残りの3症例も造血幹細胞移植後12か月以内に拡大停止が認められました。7例においては脳病変の縮小も認められました。また、重篤な感染症や合併症は見られませんでした。
「診療現場では、診断が遅れ、治療のタイミングを逸してしまうケースが少なくなく、本疾患についての社会の認知を高めていくことも大切であると考えています」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)