先天性筋ジストロフィーの、新たな発症メカニズムの一端を解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子「FKRP」の立体構造を解析
  2. FKRPは4つ集まった状態(4量体)で存在し、一部の患者でそれが崩れた状態になっていた
  3. 4量体を作らせる化合物・薬物を探すことで新たな治療法の開発につながる可能性

遺伝子「FKRP」を分子レベルで解明することから病態解明へ

東京都健康長寿医療センターは、全身の筋力が低下する遺伝子疾患、先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子「FKRP」による糖鎖合成という仕組みを解明し、新たな発症メカニズムを明らかにしました。

研究グループは以前に、「糖鎖」という体内物質の構造異常を原因とするタイプの筋ジストロフィーを発見し、その発症メカニズムを明らかにしてきました。また、FKRP遺伝子から作られるFKRPタンパク質は糖鎖を作る酵素の仲間であることや、これまで哺乳動物では見つかったことがない新しい構造が福山型筋ジストロフィーで形成されることも見出していました。

患者の一部でFKRPの構造が崩れ、酵素活性が低下

先天性筋ジストロフィーの病態解明や治療法開発のためには、このFKRP遺伝子を詳しく解析し、作用メカニズムを分子レベルで明らかにする必要がありました。そこで、研究グループはFKRP遺伝子から作られるFKRPタンパク質について、立体構造を含めて細かく解析を行いました。

すると、FKRP遺伝子から作られるFKRPタンパク質は、4つ集合した「4量体」という状態で存在していることがわかりました。さらに、患者さんから見つかったいくつかのFKRP変異では4量体を作ることができず、酵素活性が著しく低下していることも判明しました。FKRPが複数で集まって存在することは、FKRPの糖鎖を作る仕組みに欠かせないものであることもわかりました。

変異によって立体構造が崩れ、4量体を作れなくなった患者さんに対しても、4量体を作らせる化合物・薬物を探すことで、難病である筋ジストロフィーの新たな治療法の開発につながります。また、加齢性の筋肉減少症であるサルコペニアにおいても応用されることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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