約1,300人の日本人が調査対象、うち6人は錐体杆体ジストロフィー
宮崎大学医学部の研究グループは、日本人の「網膜色素変性症」に関して13の遺伝子変異を発見し、そのうち8つは新しい型である可能性があることを明らかにしました。
網膜色素変性症は、網膜に存在する光を感じる細胞(視細胞)が徐々に失われていく遺伝性の病気で、先進国における失明の主な原因となっています。約5,000人に1人の頻度で見られ、青年期より発症し、やがて失明に至る可能性があります。すでに50種類以上の遺伝子異常が原因として見つかっていますが、現状は有効な治療法がなく、厚生労働省から難病指定されています。そのうち、変異遺伝子がX染色体に存在する「X連鎖性」の網膜色素変性症においては、「網膜色素変性症GTPase調節因子」の遺伝子に見られるさまざまな遺伝的変異(以下RPGRバリアント)が主な原因として特定されています。
調査の対象となったのは、遺伝性網膜疾患(IRD)と診断を受け、2008~2018年に日本医療研究開発機構の難治性疾患実用化研究事業に登録され、既にゲノム解析データが得られていた、計730家族1,294人。これらの人につき、性別、病歴、視覚症状などに加え、ゲノムDNA情報、総合的な眼科検診の結果から分析しました。
結果、RPGRバリアントとして13の遺伝子変異を特定、さらに13家族14人から新たに8つの遺伝子変異を特定しました。14人中、8人は網膜色素変性症、6人は錐体杆体ジストロフィー(CORD)でした。CORDは、網膜の中心部である黄斑に多く分布する錐体細胞に異常が起こった後、暗いところでの物の見え方や視野の広さに関係する細胞杆体細胞に異常をきたす病気です。
今回の結果は、日本人集団におけるRPGRバリアントの明確な遺伝的背景を初めて示唆したもの。「この証拠は、患者のモニタリングとカウンセリング、および将来の治療試験のための患者の選択に役立つはずです」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)