0歳児で発症し、早死、永続的な呼吸管理が必要なケースもある
脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy、以下SMA)に対し、ノバルティス ファーマ株式会社が開発した遺伝子治療用製品「ゾルゲンスマ(R)点滴静注」(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク、以下、ゾルゲンスマ)が、厚生労働省から製造販売承認を取得しました。
SMAは、脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞という運動ニューロン)に障害が起こり、体幹や手足の筋力低下と筋委縮が起こる、進行性の遺伝性疾患です。平成30年度末に全国で858人、0歳~9歳は30人と報告されています(SMA特定医療費受給者証所持者数)。
発症年齢と臨床経過に基づいて、4つの病型に分類されており、中でも、Ⅰ型(乳児型)SMAは重症かつ高頻度にみられ、0~6か月齢で発症し、患者さんの90%以上が20か月齢前に死亡または人工呼吸器による永続的な呼吸管理が必要な状態になります。
1度の点滴静注で機能正常な遺伝子を導入、運動機能改善に期待
ゾルゲンスマは、SMAの原因遺伝子「SMN」の機能欠損を補うために、正常なSMN遺伝子を細胞に運び込む遺伝子治療製品です。運動ニューロン等に点滴を通じて導入し、神経および筋肉の機能を高め、筋萎縮を防ぐことで、SMA患者さんの生命予後、運動機能を改善することが期待されます。1回の点滴静注で治療は完了。運動ニューロンのような非分裂細胞に長期間安定して存在するように設計されています。
今回の承認は,SMA患者さんを対象に実施された5つの臨床試験の結果に基づくものです。CL-101試験(Ⅰ型SMA 患者を対象とした海外第Ⅰ相試験)においては、13.6か月齢時の永続的な呼吸補助を必要としない生存率は、ゾルゲンスマを投与した全例(n=15)で100%であり、未治療群と比較して、永続的な呼吸補助を必要としない生存率を改善しています。(遺伝性疾患プラス編集部)