皮膚が魚のウロコのように変化する「魚鱗癬」の発症に関わる遺伝子を特定
北海道大学は、皮膚のバリア形成に重要な脂質「アシルセラミド」について詳しく調査し、皮膚が魚のウロコのように変化する「魚鱗癬」の発症に関連する遺伝子を特定しました。
皮膚には物質の透過を防ぐ強力なバリアが存在します。皮膚バリアは病原体、アレルゲン、有害物質の侵入を阻止し、体内からの水分の蒸発も防いでいます。しかし、やけどやけがなどで皮膚バリアが壊されると、感染のリスクが著しく増加します。
遺伝子異常によって皮膚バリアの形成が損なわれた疾患として、先天性魚鱗癬があります。アトピー性皮膚炎の患者さんでも、魚鱗癬ほどではありませんが、皮膚バリア機能が低下しており、アレルゲンが侵入しやすくなっています。
また、皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織に分かれます。また、表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘層、基底層に分けられ、最も外側の角質層に脂質の多層構造体(脂質ラメラ)が存在し、脂質ラメラは角質層に存在する細胞の間を埋めています。
アシルセラミドという脂質物質の産生過程で重要な遺伝子の異常が、魚鱗癬の原因
研究グループが注目した「アシルセラミド」は、角質層に多い物質で、多層構造体を成すために必要といわれています。研究によって、アシルセラミドが体内でつくられる過程に欠かせない遺伝子として、「FATP4」が見つかりました。FATP4遺伝子が変異すると、「魚鱗癬未熟児症候群」(未熟児として出生し、呼吸困難、皮膚での魚鱗癬を伴う)という遺伝病が引き起こされることがすでに知られています。
今回の研究を踏まえ、例えば、アシルセラミドあるいは類似化合物の皮膚への塗布、生体内のアシルセラミド産生を増やすような薬など、皮膚バリアの異常を元に戻せるような治療薬が開発されれば、魚鱗癬治療薬やアトピー性皮膚炎の原因療法が可能となると期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)