慢性皮膚粘膜カンジダ症の病態解明に有用なモデル動物を作製、治療法開発へ

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 慢性皮膚粘膜カンジダ症は、真菌「カンジダ・アルビカンス」などが繰り返し感染する
  2. この病気の患者さんの半数以上で「STAT1」遺伝子に「GOF変異」が起こっている
  3. この変異をもつモデルマウスを作製し、人間と同様の症状を確認できた

慢性皮膚粘膜カンジダ症の約半数は、感染防御で重要な遺伝子「STAT1」に異常

広島大学は、先天的な免疫不全症候群である「慢性皮膚粘膜カンジダ症」(Chronic Mucocutaneous Candidiasis disease、以下CMCD)について研究し、病態解明に有用な動物モデル(マウス)の作製に成功しました。

CMCDは先天的な免疫の病気。皮膚や爪、口腔などの粘膜に、真菌の1つであるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans 、以下C. albicans) が繰り返し感染し、健康な人と比べて治りにくくなります。CMCD患者さんの半数以上で、「STAT1」と呼ばれる遺伝子の機能が過剰になる遺伝子の変異(GOF変異)があることが知られています。

STAT1は、病原体に対する感染防御に重要な分子です。STAT1のGOF変異は、2011年に発見され、現在までに世界で300例以上の患者さんが見つかっています。さらに近年の研究で、CMCDの患者さんはC. albicans以外の病原体にも感染しやすく、自己免疫性疾患も合併すること、また、重症で予後不良の場合もあることなどがわかってきました。

唯一の根治的な治療法である造血幹細胞移植の治療成績はまだ良好とはいえず、分子標的薬であるJAK1/2阻害薬が有効という報告もありますが、長期的な治療効果や副作用の評価が課題となっています。そのため、重症CMCD患者さんに対して、その病態に基づいた、より安全で効果的な治療法の開発が求められています。

ヒトと同様の病態示す「STAT1-GOF変異」をもつマウスを作出

研究グループは、STAT1-GOF変異を有する患者さんの病態を解明するため、今までにCMCDの患者さんで報告されているSTAT1-GOF変異の1つ「R274Q変異」を導入したマウスを、遺伝子改変技術を用いて作製しました。

続いて、そのマウスにC. albicansを実験的に感染させ、どれだけ感染しやすい状態かを解析したところ、ヒトの患者さんと同じように感染しやすいことが確認されました。具体的には、小腸の粘膜上皮にC. albicansが検出され、糞便中においてもC. albicansの遺伝子が増加していました。

この研究で作製された変異導入マウスを用い、CMCD患者さんの病態解明や、治療法の開発が期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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