健康診断でパーキンソン病・レビー小体型認知症のリスク評価ができる可能性

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. パーキンソン病とレビー小体型認知症は、発症の10年以上前から便秘などの前駆症状
  2. 健診受診者を対象とした調査で、前駆症状を有するハイリスク者を特定
  3. 50歳以上の健診受診者の5.7%が、2つ以上の前駆症状を有するハイリスク者に該当

日本人におけるパーキンソン病とレビー小体型認知症の前駆症状の保有率を調査

名古屋大学は、「レビー小体病」(パーキンソン病とレビー小体型認知症を合わせた疾患概念)を対象にした臨床研究を行い、健康診断で、便秘やREM期睡眠行動異常症(以下、RBD)、嗅覚低下などに関する質問票調査を実施することで、パーキンソン病・認知症のリスク評価ができる可能性があると発表しました。

パーキンソン病は、「αシヌクレイン」と呼ばれる異常なタンパク質が神経細胞内に蓄積することにより、脳内のドーパミン神経に障害が起こり、「手足の震え」「筋肉や関節が固くなる」「動作緩慢」「転びやすくなる」などの症状を引き起こします。また、レビー小体型認知症は、パーキンソン病と同様に、αシヌクレインの蓄積に起因し、幻視を始めとする認知機能障害や、パーキンソン病に類似した運動症状を呈します。いずれも、進行性の難病です。

レビー小体病は、神経症状を発症する10~20年前から便秘やRBD、嗅覚低下などの前駆症状を呈することが注目されていましたが、日本人の一般人口における前駆症状の保有率は明らかではありませんでした。

質問調査でハイリスクに該当した男性の血液検査で、前駆期のレビー小体病に似た低値

名古屋大学と国立長寿医療研究センターの研究チームは、久美愛厚生病院(岐阜県高山市)、だいどうクリニック(愛知県名古屋市)の健診センターと連携し、これらの施設の健診受診者(年間1万2,378人)を対象にしたレビー小体病の前駆症状に関する質問紙調査を実施しました。その結果、50歳以上の健診受診者の5.7%が2つ以上の前駆症状を有するハイリスク者に該当し、男性のハイリスク者では貧血やコレステロールに関する採血項目で、前駆期のレビー小体病患者に類似した低値を示すことが明らかになりました。

「神経症状を有しないハイリスク者を通常診療で特定することは極めて困難ですが、本研究の結果から、健康診断時の質問紙による簡便な調査で、神経変性疾患のハイリスク者の抽出が可能であることが示されました。今後、レビー小体病の先制治療を目指したハイリスク者の臨床研究に着手する予定です」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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