不随意運動やてんかん発作などを呈する、進行性ミオクローヌスてんかん
横浜市立大学を中心とした研究グループは、「進行性ミオクローヌスてんかん」の原因として、「SEMA6B遺伝子」の変異を同定しました。
進行性ミオクローヌスてんかんは、ミオクローヌス(自分の意志とは無関係に筋肉が素早く収縮する不随意運動)、てんかん発作、小脳症状、認知機能障害などを特徴とする進行性の経過をたどる疾患群です。発達性およびてんかん性脳症に分類されています。
発達性およびてんかん性脳症は、さまざまな遺伝子変異により起こるため、診断率が約40~50%程度と、決して高いとは言えません。しかし、患者さんの病気の原因に合った治療を行うためには、その患者さんごとに、どの遺伝子が変異しているのかを特定することが重要です。
中枢神経系の発達に関与するSEMA6B遺伝子に変異を発見
研究グループは、発達性およびてんかん性脳症の患者さん346人について、効率的に遺伝子変異を見つけ出すことができる「全エクソームシーケンシング」という解析を行い、そのデータから遺伝子変異を探索しました。結果、2人から「SEMA6B」と呼ばれる遺伝子に、タンパク質短縮型の新生突然変異(両親には見られず子どもにのみ見られる変異)がありました。同一の遺伝子に複数の患者さんで新生突然変異が見つかったのはSEMA6B遺伝子のみでした。SEMA6B遺伝子からつくられるタンパク質は、中枢神経系の発達に関与していると考えられており、今回見つかった変異は、そのタンパク質が正常より短くなるような変異でした。
詳しく調べるため、SEMA6B遺伝子に注目して、同疾患やその類縁疾患を呈する別の患者さん5,699人の全エクソームシーケンシングの解析データを調べたところ、同遺伝子の同様の変異が3人で見つかりました。さらに、モデル動物のゼブラフィッシュを用いてSEMA6B遺伝子の変異を有する疾患モデルを作製し、行動観察をしたところ、中枢神経において神経細胞の減少を認め、てんかん様発作の行動増強がみられました。
「進行性ミオクローヌスてんかんの原因となる新たな遺伝子変異が同定されたことで、本疾患の分子診断や病態メカニズムの解明、医学的管理法や治療法の開発に寄与できることが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)