新生児ミトコンドリア心筋症、日本人を含む重篤な患者さんに共通の原因遺伝子を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ミトコンドリア心筋症は、赤ちゃんの頃からみられると重篤で命に関わることもある
  2. 日本人の重篤なミトコンドリア心筋症患者さんのゲノム解析で「ATAD3遺伝子」異常を発見
  3. 同様の異常を世界16家系17患者さんで発見、病態解明と治療法開発の加速に期待

重篤な新生児の患者さんで「ATAD3遺伝子」が重複するタイプの変異を発見

千葉県こども病院を中心とした研究グループは、新生児の重篤なミトコンドリア心筋症患者さんのゲノム解析を行い、「ATAD3遺伝子」の異常が発症に関与することを発見したと発表しました。

ミトコンドリア病とは、細胞の中でエネルギーを取り出す役割をしている「ミトコンドリア」の働きが低下することが原因で起こる病気の総称です。出生5,000人に1人の割合で発症し、さまざまな臓器・組織で多様な症状が現れます。また、発症年齢も、遺伝形式も、さまざまです。ミトコンドリア心筋症は、ミトコンドリア病でみられる心筋異常です。研究グループがこれまでに行った調査により、新生児期・乳幼児期に心筋症がみられるミトコンドリア病は重篤なことが多く、特に心筋症の合併は命に関わるとわかっています。

研究グループはこれまでに、全国から寄せられるミトコンドリア病疑い患者さんの生化学診断と遺伝子診断に取り組んできました。今回、重篤な心筋症をもつミトコンドリア病の新生児患者さんのゲノム解析を行い、4家系において、「ATAD3遺伝子」が重複するタイプの変異がみられることを発見しました。

計16家系17患者さんで同様の変異を発見、病態解明と治療法開発の加速に期待

ATAD3遺伝子には、ATAD3A、ATAD3B、ATAD3Cの3種類があります。この3つはよく似ており、1番染色体に並んで存在しています。このように似た遺伝子が並んでいる部分は変異が起こりやすく、今回もそうした理由で、遺伝子が重複するタイプの変異が起きたことがわかりました。さらに詳しい解析により、この変異で「ATAD3A/C融合タンパク質」が作られるようになり、これが原因で、ミトコンドリアの機能障害を起こすことも判明しました。

研究グループは、さらに海外の共同研究グループにもこの変異を調べてもらいました。その結果、日本人と合わせて計16家系17患者さんで同様の変異が発見されました。ミトコンドリア心筋症の症例報告は日本でも増加していますが、これほどまで多くの患者さんに共通して見つかった病因遺伝子はこれまでになく、潜在的に多くの心筋症が同様の遺伝子変異を有する可能性が示唆されました。今後、ミトコンドリア心筋症のさらなる病態解明と治療法の開発が加速されることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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