SOD1遺伝子異常を伴う家族性ALSの治療薬候補トフェルセン、1/2相臨床試験結果発表

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. SOD1遺伝子異常のALS患者さん対象に、開発中の核酸医薬品「トフェルセン」の安全性などを評価
  2. 投与開始3か月後のSOD1濃度は、プラセボと比較してトフェルセン投与で36%減少
  3. 筋力の低下を抑制する数値的な傾向も認められた

異常な「SOD1」の合成を抑制するよう設計されたトフェルセン

米バイオジェン社は7月14日、開発中の治療薬「トフェルセン(tofersen)」を、スーパーオキシド・ジスムターゼ1遺伝子(以下、SOD1遺伝子)異常を伴う筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の患者さんに投与した臨床試験の結果を発表しました。

ALSは、脳と脊髄で運動ニューロンの喪失をもたらす進行性の神経変性疾患。これまでの研究から、異常なSOD1遺伝子から作られたSODが運動神経の細胞死を引き起こすことが明らかになっており、一部の家族性ALS患者さんは、SOD1遺伝子の異常が原因とわかっています。ALSの家族歴がない場合も、遺伝子検査によりSOD1遺伝子の異常が見つかることがあり、この遺伝子に異常をもつ患者さんは、ALS全体の2%と考えられています。

トフェルセンは、「アンチセンス・オリゴヌクレオチド」という種類の核酸医薬品で、異常のあるSOD1遺伝子から異常なSOD1タンパク質が合成される過程をブロックします。SOD1遺伝子異常が原因のALS患者さんの治療として、この薬を髄腔内に投与することが検討されています。

トフェルセン投与でSOD1濃度減少、筋力低下抑制

臨床試験(1相、2相試験)は、SOD1遺伝子異常を伴うALS患者さんを対象に行われました。対象患者さんは、トフェルセンまたはプラセボ(偽薬)を、1回だけ投与するグループと、複数回投与するグループに分けられました。複数回投与されたグループは、12週にわたり、プラセボまたはトフェルセンの用量を徐々に増やして(20、40、60、100mg)投与されました。主要評価項目は安全性と薬物動態(投与後の吸収、分布、代謝および排泄を検討)、副次的評価項目は、投与約3か月後の脳脊髄液(髄液)中SOD1濃度の試験開始時からの変化量。臨床機能と肺活量の測定も行われました。

安全性について、1回以上の用量のトフェルセンの投与を受けた患者さん(38人)の中で最も多く報告された有害事象は、頭痛、処置痛、腰椎穿刺後症候群、転倒でした。また、トフェルセン群で5人、プラセボ群で2人に重篤な有害事象がありました。

副次的評価項目の投与3か月後のSOD1濃度は、トフェルセン投与群で36%減少を示したのに対し、プラセボ群では3%の減少でした。その他、プラセボ群と比較して、トフェルセン群では筋力の低下を抑制する数値的な傾向が認められました。

現在臨床試験(3相試験)が継続されており、SOD1異常のALS成人患者さんを対象にトフェルセンの有効性と安全性が評価される予定です。(遺伝性疾患プラス編集部)

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