分類不能型免疫不全症(CVID)の原因遺伝子として「APRIL」を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 分類不能型免疫不全症(CVID)は、B細胞が異常になる病気で、原因不明な症例が多い
  2. 今回、CVIDの成人患者さんで、ゲノム解析(全エクソン解析)を実施
  3. APRILと呼ばれる遺伝子の欠損により抗体産生不全になっていることが判明

繰り返す感染症、メモリーB細胞や抗体産生細胞の減少を認める「分類不能型免疫不全症」

東京医科歯科大学を中心とした研究グループは、「A PRoliferation-Inducing Ligand」(以下APRIL)という遺伝子の異常が、分類不能型免疫不全症(CVID)に関わっていることを発見しました。

CVIDは、遺伝子異常による原発性免疫不全症の中で最も多い疾患。体内に入った異物を排除する役割を担う「抗体」が正しく作られなくなることで免疫機能が落ち、細菌感染症やウイルス感染症を繰り返します。こうした感染症は、重症化する場合もあります。

CVIDでは、免疫に関わるB細胞のうち、「メモリーB細胞」(1度目の免疫反応で体に入った異物を「抗原」と記憶したB細胞)と「形質細胞」(B細胞が抗原を認識して抗体を作り出すようになった細胞)のいずれか、あるいは両方の減少が認められます。CVIDは、これまで10以上の原因遺伝子が特定されていますが、それらの遺伝子異常が認められる患者さんは極めてまれであり、まだほとんどの患者さんでは原因遺伝子がわからないままです。

形質細胞の生存に重要なAPRILの欠失が抗体産生不全を引き起こしていた

今回、研究グループは、成人CVID患者さんで「全エクソン解析」という種類のゲノム解析を実施。その結果、B細胞の増殖や形質細胞の生存などに重要な遺伝子であるAPRILが欠損していることを発見しました。

さらに、患者さんの細胞をもとにiPS細胞(人工多能性幹細胞)をつくり、詳しく調べたところ、確かにAPRILの欠損が、B細胞から形質細胞になる過程や生存を妨げており、その結果、抗体産生不全が起こっていると考えられました。

今後、正常なAPRILを利用した治療法の開発が期待できると、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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