「変異したタンパク質の量」の情報も、先天性疾患の診断に重要
先天性疾患のスクリーニングなどに広く利用されている「乾燥ろ紙血」(dried blood spot、以下DBS)から、病気に関係するタンパク質を見つける簡便で高感度なシステムが開発されました。
多くの先天性疾患では、診断のために、遺伝子検査で原因となる遺伝子の「翻訳領域」に変異があるかを調べます。翻訳領域とは、遺伝子のうち「タンパク質がつくられるための暗号」になっている部分をいいます。遺伝子には、翻訳領域のほか、「作られるタンパク質の量」などを制御する「発現制御領域」があるのですが、この領域は未解明な部分が多く、遺伝子検査の対象となっていません。しかし、「変異したタンパク質の量」も重要なので検査できる方法が求められています。
DBS検体から疾患関連のタンパク質585種類を見つけることに成功
研究グループは、先天性疾患のスクリーニングなどに広く利用されているDBSから、疾患に関与する多くのタンパク質を直接検出することができるか試みました。DBSとは、採血した血液をろ紙にしみこませ、室温で乾燥させたもので、新生児で血液に含まれるホルモンや酵素などを測定するのに用いられます。
DBSには、ヘモグロビン、アルブミン、グロブリンなどのタンパク質が大量に含まれており、これらが微量なタンパク質の検出を妨げています。そこで研究グループは、炭酸ナトリウム沈殿という工程を経ることにより、これらのタンパク質を簡便かつ効率的に除去し、調べたいタンパク質を濃縮する方法を編み出しました。
さらに、最新鋭の分析計と最先端の解析法を組み合わせることにより、DBSに含まれる1,977種類のタンパク質を同定することに成功。これらのタンパク質には、ヒトの遺伝子変異と遺伝性疾患のデータベースに登録されている585種類の疾患関連タンパク質が含まれていました。
「このシステムを、新生児などの先天性疾患の検査に応用することで、これまでの検査で見落としていた疾患について、発症の予防と早期治療が可能になることが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)