ダウン症候群合併の血液異常「TAM」、GATA1遺伝子異常との関連は不明だった
京都大学の研究グループは、ダウン症候群に合併する「一過性骨髄異常増殖症」(transient abnormal myelopoiesis、以下TAM)の原因遺伝子として知られる「GATA1遺伝子」の変異について詳しく研究し、どのように病態に影響しているかを明らかにしました。
TAMは、ダウン症候群に合併し、血液中の白血球増加や血小板減少といった症状を呈する一過性の前がん病態です。自然治癒する軽症例が多い一方、重症例では命を落とすこともあることが課題となっています。原因として、GATA1遺伝子の変異が知られていますが、その変異が実際に影響しているのはどの細胞か、ということはこれまで不明でした。GATA1遺伝子は、赤血球や巨核球(血小板を産生)ができる過程で働く遺伝子です。
GATA1変異は造血前駆細胞のうち、巨赤芽球系の細胞に強く関連
研究グループはまず、GATA1遺伝子に変異を有するTAM患者さんの細胞から作ったiPS細胞などを用いて、シャーレの中で病態を再現しました。その上で、血液のいろいろな細胞が作られていく段階ごとに解析し、最も病態に影響していると考えられる造血前駆細胞はどれかを探索しました。造血前駆細胞とは、それぞれの血球になる前段階の細胞をいいます。
その結果、巨赤芽球(大きく未熟な赤血球)系の前駆細胞「P-erymk41(+)分画」が関わっていることを突き止めました。さらに詳しく調べたところ、P-erymk41(+)分画は、赤血球が作られることや巨核球の成熟が妨げられることと、異常な白血球が増殖することの両方に、強く関連していることが示されました。
また、GATA1変異を有する細胞は、遺伝子発現レベルでも、白血球が作られやすくなっていたり、細胞が増殖しやすくなっていたりすることがわかり、腫瘍になる性質をもつことが示されました。
TAMはダウン症候群に合併する「急性巨核芽球性白血病」(DS-AMKL)の前段階の病態と考えられています。そのため、GATA1遺伝子変異の影響が及ぶ細胞集団が特定できたことで、TAMだけでなくDS-AMKLの病因解明、発症予測にもつながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)