遺伝子治療で重要な「レンチウイルスベクター」、遺伝子導入効率が課題
米セントジュード小児研究病院を中心とした研究グループは、造血幹細胞移植の遺伝子治療の際に「レンチウイルスベクター」を効率よく導入する改良法を開発しました。
造血幹細胞移植は、血液の病気を治療するために、血液の元となる細胞(造血幹細胞)を移植する方法で、白血病などの血液がんや、骨髄異形成症候群などの治療として行われます。ドナーから提供された、造血幹細胞を含む骨髄を移植するほか、病気の造血幹細胞を患者さんからいったん取り出して、正常な遺伝子を導入してまた体内に戻すといった、遺伝子治療も行われています。
造血幹細胞の遺伝子治療では、患者さんの造血幹細胞に治療遺伝子を運び込む際、「ベクター」を用います。ベクターはいくつか種類があり、造血幹細胞への遺伝子導入には通常、レンチウイルスベクターを使います。
ウイルスベクターの使用において重要なこととして、「VCN」(vector copy number)が挙げられます。これは、造血幹細胞に導入されたウイルスベクターの数、つまり、遺伝子導入の効率を意味します。遺伝子導入後にこの数値を確認しますが、VCNが足りなければ治療に十分な遺伝子発現量を得られません。造血幹細胞への遺伝子導入効率があまり高くないことは、これまで課題となってきました。
改良版の遺伝子導入操作では導入効率の増加を確認
今回、研究グループは「レンチウイルスベクター」の、造血幹細胞への導入操作を改良。X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)という病気において、CD34というタンパク質を表面にもつ細胞に遺伝子導入を行う遺伝子治療で、その有用性を検討しました。
その結果、改良版では操作が簡便化され、「VCN」も向上しました。また、導入時に「LentiBOOST」、「LentiBOOST+プロスタグランジンE2」、「シクロスポリンH」といった薬剤を併用すると、造血幹細胞へのVCNは増加することが確認されました。