9割以上の患者さんが苦しむ慢性疼痛のメカニズムは未解明
大阪工業大学を中心とした研究グループは、指定難病「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」で発症する慢性疼痛のメカニズムについてマウスを用いて検討し、「テネイシンX」という遺伝子が関わっていることを明らかにしました。
EDSは5,000人に1人が発症すると推計されている遺伝性疾患。皮膚や関節の過伸展性(伸びやすい、脱臼しやすい)や脆弱性(裂けやすい、内出血しやすい)などの症状が特徴で、原因遺伝子や症状から13の病型に分類されています。また、患者さんの9割に慢性疼痛が見られますが、そのメカニズムはまだ解明されていません。
関節や腱、皮膚の構築に重要な遺伝子「テネイシンX」を欠損したマウスで疼痛
研究グループは原因遺伝子の1つとされる「テネイシンX」に着目しました。この遺伝子は、関節や腱、皮膚の結合組織を構築するうえで重要な役割を担っています。テネイシンXを欠損したマウスを作製して解析したところ、EDS患者さんに起こる神経障害性疼痛の特徴である「アロディニア(異痛症)」(触覚などの弱い刺激でも痛く感じること)を誘発することが明らかになりました。さらに、電気刺激実験により、テネイシンX欠損マウスでは有髄感覚神経という種類の神経が過敏になっていることもわかりました。
研究グループは、「今後、EDSにおける慢性疼痛の発症メカニズムを解明するだけでなく、力学的な刺激が慢性疼痛を引き起こすメカニズムや、コラーゲンを中心とする細胞外マトリックスが疼痛発症にどう関与しているかの解明も目指します」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)