全身の靭帯や腱などが硬くなって骨に変わる難病
京都大学は、進行性骨化性線維異形成症(以下、FOP)のモデルマウスを用いて、自然発生する異所性骨が「ラパマイシン」という薬剤の予防的投与により抑制されたことを発表しました。
FOPは、ACVR1遺伝子の変異が原因で、全身の靭帯や腱などが硬くなって骨に変わる「異所性骨化」を起こす疾患。異所性骨化には外傷をきっかけに生じる場合と、明らかなきっかけがなく生じる場合とがあります。現状では、異所性骨化を抑制するのに有効な治療法は確立されていません。
モデルマウスにラパマイシンの予防的投与で自然発生の異所性骨形成を抑制
研究グループはこれまでに、FOPモデルマウスを用いた研究で、「ラパマイシン」という薬剤を使うと外傷後の異所性骨形成が抑制されることを確認していました。そこで今回、自然発生する異所性骨化を同じ薬で抑制できないかを検討しました。
今回の実験では、異所性骨を生じていないFOPモデルマウスにラパマイシンを予防的投与し、対照群と比較しました。すると、対照群は異所性骨が自然発生しましたが、ラパマイシンを投与したマウスでは異所性骨の自然発生が抑制されていることがわかりました。また、すでに形成された異所性骨を切除しようとした場合、手術自体が外傷となり再発につながることが課題なのですが、今回、モデルマウスの実験では、切除前からラパマイシンの投与を行うことで、異所性骨切除後の再発が軽減されることも確認されました。
研究グループは、「これらの結果から、臨床面においてもラパマイシンの予防的投与による有効性が期待されます。異所性骨切除後の再発に対してはより強固に抑制する治療法を今後さらに探求していきます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)