発達障害は多くの関連遺伝子が報告されているが、大部分はまだ原因不明
発達障害の患者さんのゲノムDNA解析と、疾患モデルマウスの解析を行った研究から、発達障害に関わる新規の遺伝子が多数発見され、発達障害とてんかんに関連する症状に関わる遺伝子も特定されました。
発達障害は、対人コミュニケーションの問題、社会性の障害、学習障害、落ち着きがない、じっとしていられない、集中できないなど多岐にわたる症状を通常低年齢(3歳くらいまで)において発症する疾患で、しばしば頭蓋骨の形成異常やてんかんなどを伴います。
近年の大規模なゲノム解析により、数百の遺伝子から新たな変異が疾患に関連するとして報告されていますが、患者さんの大部分においては原因が未解明のままです。
PJA1遺伝子欠損マウスは、発達障害とてんかんの両症状の一部を再現
今回、研究グループは、日本人の発達障害患者さん合計558人と、健常対照群575人を対象にDNAを詳しく調べました。発達障害患者さんには、三角頭蓋合併(51例)、てんかん合併(40例)が含まれ、残りの463人は別の発達障害患者さんでした。
その結果、57個の遺伝子から62個の新たな変異が見つかりました。そのうち9遺伝子(CYP1A1、C14orf119、FLI1、CYB5R4、SEL1L2、RAB11FIP2、ZMYND8、ZNF143およびMSX2)は、これまでに発達障害の原因として報告されていない遺伝子でした。また、7人の男性患者さん(少なくとも5人は三角頭蓋を合併)からは、「PJA1」と呼ばれる遺伝子から「ヘミ接合性ミスセンス変異」が共通で見つかりました。
このPJA1という遺伝子のはたらきを確認するため、変異のあるPJA1遺伝子を有するマウスと、PJA1遺伝子自体を欠くマウス(Pja1-KOマウス)を作製して研究しました。すると、Pja1-KOマウスではコミュニケーション障害、また、けいれん誘発性の亢進が見られました。これは、Pja1-KOマウスで、発達障害およびてんかんに関連する症状の一部が再現されたことを意味します。
研究グループは今回の研究成果について、「発達障害発症のメカニズムの理解や治療法の開発・改良に大きく寄与する可能性があります」と、述べています。