パーキンソン病患者さん由来のiPS細胞を用いて、有効な治療薬候補の特定に成功

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 家族性パーキンソン病患者さん由来のiPS細胞を用いて、病態自動検出システムを開発
  2. 開発したシステムを用いて、治療薬候補となる化合物を4つ特定した
  3. 特定した化合物は、家族性のみならず孤発性パーキンソン病の症状も改善する可能性

根治治療につながる有効な薬剤を見つけるのは困難だった

順天堂大学の研究グループは、家族性パーキンソン病患者さんの細胞から作製したiPS細胞を用いて研究を行い、家族性のみならず孤発性パーキンソン病患者さんにも有効な可能性のある治療薬の候補を特定しました。

パーキンソン病は、ドパミンという物質を出す神経細胞(ドパミン神経細胞)の減少により運動症状や自律神経障害を示す疾患。現在は、失われたドパミン神経細胞の機能を補う対症療法のみで、根本的な治療法がありません。約90%のパーキンソン病患者さんは、原因が明らかでない孤発性のパーキンソン病で、残る10%は家族性パーキンソン病です。

研究グループは原因遺伝子が明らかな家族性パーキンソン病患者さん由来のiPS細胞を作製し、発症メカニズムの解明を進めてきました。これまでの研究から、一部の家族性パーキンソン病では、細胞内の損傷したミトコンドリアを除去する働きに異常があることがわかっています。しかし、この異常に対して有効な薬剤を探すのは簡単ではなく、数百種類の薬剤による効果を一度に検証する、といったことも困難でした。

画像で病態を自動判別、絞り込まれた4つの治療薬候補は孤発性にも一部効果

今回、研究グループは新たに3つの成果を挙げました。

1つ目として、家族性パーキンソン病患者さん由来のiPS細胞を用いて、「損傷ミトコンドリア除去機能の低下」や「細胞死の増加」といった病態を画像で判別し、自動で解析するシステムを構築しました。これを用いることにより多くのサンプルを一度に解析できる上、解析プロセスの高速化が可能になりました。

2つ目は、上記で構築したシステムを応用して、320種もの化合物から「損傷ミトコンドリア除去機能の低下」の改善に効果がありそうなものを絞り込んでいき、最終的に4つの化合物を治療薬につながる候補として選定しました。

3つ目は、4つの化合物それぞれを、ショウジョウバエの病態モデルに投与したところ、すべての化合物で症状の改善が見られました。また、孤発性パーキンソン病患者さん由来のiPS細胞でも4つの化合物の効果を調べたところ、一部の患者さんの細胞で症状の改善が確認されました。

研究グループは、「今回見つかった4つの化合物をそのまま治療薬に応用できるわけではありませんが、構造が近い薬物をさらに調べ、最適な濃度を検討することによって新たな治療薬候補の開発につながる可能性があります」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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