未診断の免疫不全関連の疾患を早期診断するには?
これまでに世界で5家系7症例のみ報告されていた希少な病態が、「常染色体劣性STAT1完全欠損症」(以下、AR-STAT1完全欠損症)であることが発見されました。広島大学が、東京医科歯科大学、かずさDNA研究所、米ロックフェラー大学と行った共同研究の成果です。
400種類ほど疾患がある原発性免疫不全症候群(以下、PID)は、いずれもまれな疾患で、診断がとても難しいものばかりです。しかし、近年、網羅的な遺伝子解析を実現した「全エクソーム解析」により、今まで未診断であったPID患者さんの約3分の1は診断可能となりました。一方、全エクソーム解析を実施しても診断に至らず、未診断のままの患者さんも存在し、診断法の早期確立が課題とされています。
「ターゲットRNAシークエンス」実施で、AR-STAT1完全欠損症を発見
研究グループは、BCG接種後に播種性BCG感染症を発症した症例について詳しく調べた結果、AR-STAT1完全欠損症を発見しました。従来の「全エクソーム解析」に加えて、「ターゲットRNAシークエンス」と呼ばれる、さらに詳しく遺伝子を解析する手法を実施することで特定されました。
「STAT1」と呼ばれる遺伝子は、PID発症に関与する遺伝子の1つ。病原体からの感染防御や、マイコバクテリアなどの細胞内に寄生する細菌に対する感染防御において重要な役割をもちます。そのため、AR-STAT1完全欠損症では、STAT1遺伝子の機能が完全に失われるため、患者さんは、ウイルスやマイコバクテリアによる重篤な感染症を繰り返します。
現在のところ、日本でこの疾患の報告はありません。命を脅かす重症感染症のため自然予後は不良ですが、造血幹細胞移植により根治が見込めるため、早期診断が重要となる疾患です。
研究グループは、「全エクソーム解析によって診断確定に至らないPID症例に対して、ターゲットRNAシークエンスを導入することで、診断率が向上し、早期診断治療に貢献できる可能性が示されました」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)