新しい血友病A治療薬、臨床試験で従来薬より効果の長続きを確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 血友病Aの治療に使われる従来の第VIII因子製剤は、効果の持続が別の因子に依存する
  2. 別の因子に依存しない設計の新薬を開発、臨床試験で従来薬より長い効果を確認
  3. インヒビターの発現や、副作用も認められなかった

従来より効果の持続が期待できる設計の、新しい第VIII因子製剤

仏サノフィは、開発中の血友病A治療薬「BIVV001」が、成人の重症血友病A患者さんを対象に安全性、忍容性と薬物動態を評価した第I/IIa相臨床試験(EXTEN-A試験)で、肯定的な結果が得られたと発表しました。

血友病Aは、出血を止める際に必要な血液凝固因子のうち「第VIII(8)因子」の活性が生まれつき全くない、もしくは十分な活性が得られないため、非常に血が止まりにくい遺伝性疾患です。

新たな遺伝子組換え型第VIII因子製剤のBIVV001(rFVIIIFc-VWF-XTEN)は、血友病A患者さんが予防的に注射をするための薬で、従来の第VIII因子製剤よりも効果が長く持続し、週1回の注射で済む薬として、開発が進められています。従来の第VIII 因子製剤は、効果の持続が「フォン・ヴィレブランド因子」というタンパク質に依存しているのですが、BIVV001は、この因子に依存しない設計となっており、これが、効果が長く持続する理由となっています。

従来薬より効果の持続を確認、インヒビターの発現や有害事象は認めず

今回、結果が得られたEXTEN-A試験は、19~63歳の重症血友病Aの患者さんを対象とした非盲検多施設共同試験。重症度は「因子活性レベル」を指標に評価され、今回参加の重症患者さんは、因子活性レベルが1%未満の患者さんでした。対象者は、従来の遺伝子組換え第VIII因子製剤(rFVIII)の投与を1回受けた後、休薬期間を置いてから、6人には25 IU/kg、8人には65 IU/kgの用量でBIVV001が投与され、この薬の安全性、忍容性(副作用の程度)と薬物動態が評価されました。主要評価項目は、有害事象とインヒビターの発現状況でした。

試験の結果、BIVV001の忍容性はおおむね良好で、投与後28日間の観察ではインヒビターの発現は認められませんでした。試験期間中、アレルギー反応、アナフィラキシーなどの有害事象や、臨床上問題のある治療に関連した有害事象は認められませんでした。

65 IU/kgの量でBIVV001の投与を1回受けたグループでは、第VIII因子の半減期(投与後に体内での活性が半分に減ってしまうまでの時間)は43時間で、従来薬(rFVIII)の半減期(13時間)の3倍以上でした。投与4日後までの第VIII因子活性の平均値は51%以上と正常範囲内にあり、投与7日後の活性は17%でした。

25 IU/kgのグループでは、BIVV001の投与を1回受けた後の第VIII因子の半減期は38時間で、rFVIIIの半減期(9時間)の4倍でした。投与7日後の第VIII因子活性の平均値は5%でした。

現在、BIVV001は、12歳以上の治療経験のある重症血友病Aの患者さん150人を対象に、安全性と有効性の最終確認段階である第III相試験(XTEND-1試験)が行われています。

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